第2話 1
なぜか私はこいつこと伊田俊紀と付き合っていることになっているらしい。
周囲の男子はよく、
「なんであいつが詩翔雪さんの彼氏なんだよ」
「代われよ」
「確かに見劣りしないけどさ……」
「あいつはよく寝てばっかりだぜ……」
という恨み言が聞こえてくるし、
「私たちのアイドルを奪うなんて、キー」
「許さぬまじ」
「詩翔雪さんともっと釣り合う方がいるはずよ」
「私たちの詩翔雪さんを自由にしろ」
と、女子たちも伊田への恨み言が聞こえる。私としては、いつから私たちは付き合っているという噂が広まったんです? と問い質したい。伊田と付き合うなんて発想はどっから出てきたのだろうか?
「授業、眠い」
伊田は眠たそうな声で発した。まだ、眠気が抜けていないらしい。しきりに右目を擦っている。
仕方ないから、シャープペンシルでツンツン、と突っつく。伊田は、ビクッと身を動かす。それでも伊田は果敢に寝ようとするから、その度に、突っつく。
なんだか楽しくなってきちゃったな、と私は先生に気が付かれるまでツンツンを繰り返した。
「くそ、なんで、あいつが、詩翔雪さんをあんな表情にさせられるんだ」
「俺だって、やれるさ」
「そうだなお前の寒いギャグは誰に対してもヤバいな」
そんなひそひそ声が聞こえた。
あんな表情とはどんな表情なのだろうか?
私は両手で頬を触った。何も変化が感じなかった。結局私にはわからない。
そうして、今日もう授業が始まり、順当に授業を受ける。
午前中の授業が終わり、昼ご飯。
「極、一緒に食べよう」
ご飯に誘ってくれたのは、上野余里(うえのより)。ギャルっぽい見た目と派手な言動から、誤解されやすいのだけど、とっても真面目な子。見た目で誤解されやすい仲間同士、気が合う。
「極ももうちょっと愛想がよければ、もっとモテるのにね〜」
「別に必要ない」
「それはそうだけど、やはり笑顔があった方が人気が上がるわよ」
「人気を必要としていないからいい」
「そんな感じだからね〜」
余里は出来が悪い娘を見る母親のような視線を私に送っている。その視線は不愉快だ。
「それなのに、伊田くんとの関係性がね〜。信じられないわ「
「私も付き合った覚えがないのに、なぜか彼氏彼女の関係になっている。なんでだろう?」
「だって、ほら。彼は唯一の男だからよ」
「……? 唯一って?」
「く、無自覚ですか!」
余里は悔しそうに梅干しを食す。……すごく酸っぱそう。案の定、むせている。
「とにかく、部活が一緒なんでしょ? そのときは何をしているのよ?」
「え、えっと。確か機能は……」
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