第1話

 女は自身の親を殺した。


 肝を縮めた兄に対して、少女の瞳孔は散大していた。


 女は学校に赴き、花瓶をいくつも割って回った。役目を失った水分が、教室中に拡散していく。


 それに十分満足すると、女は一つの花瓶、唯一の冷たかった花瓶から花を取り出し。温かい割れた花瓶の一つに、それを丁寧に活けた。


 これできっと、薔薇は美しく育つだろう。


 大好きな人に愛を伝えるための、真っ赤で純粋な薔薇のように。


 今、女は魔法少女だった。


 家に帰ると、そこは家。惨状も功績も、成したことだけがそこには残され。そして、成さなかったことを女は悔やんだ。兄の姿が消えていて、それはそれは不愉快に思った。


 女は兄の学校に行った。兄は学生だから、学校にいるに違いない。


 正門で正規の手続きを踏んで、女は兄のことを待つ。数分ほど待つと、兄も面会室に通され。ドアが締まり女の方を見ると、兄は小さく声を上げた。だから、女は喉を潰した。少しの間だからと、そのまま金槌で気絶させた。


 何も知らない守衛に、兄が体調不良になったと言い。そして、家まで背負って帰った。


 女は、兄が一番嫌いだった。起きてからの方が事は楽しいとか、そんな事を考えたくもないほどに、目覚めた兄を見たくなかった。


 だから、寝たまま事を終わらせて。


 これからどうしようかと、急須で茶を一杯淹れ考えた。

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