ひとりで、断つ

「久しぶりね。」

最近絵の彼女は起動しっぱなしにしている。

だから美術室に入ればいつも声をかけてくれた。

「……うん。」

最近は彼のいないタイミングを見計らって訪れている。

伸びた日陰で暇を潰しているだけだけれど。

「私、今のあなたのこと嫌い。」

あまりに脈絡が無い、冷たい告白に心が固まる。石みたいになってひびが入る音が脳に響く。彼女の言葉はいつも率直で正直痛い。

世間話をするように頬杖をついたまま言うんだからいつも通りに流すしかないのだろう。

「それ、失恋ほやほやのJKに言うー? 」

彼女の方が向けない。それが慰めとわかっていても涙は引っ込まない。

「ウジウジしててどうしようもない。その重い前髪も切ったら絶対可愛いのに。」

「えー。」

どうにか語尾を間延びさせて悲しさを忘れようとする。でも、そう思うほど惨めで。

「じゃあね。」

魔法はやっぱりそのままにして廊下にでた。

暗く冷えていて、零れかけてたものが凍りそうだ。

「はぁ。」

誰も通りゃしない廊下の1部にこの時だけはなりたかった。

ポケットからスマートフォンを手癖で出して「先帰るね」とバレー部の友達に送る。

その後いきつけでもなんでもない近くの美容院に電話して予約する。

少しでも可愛くなれたら、どうだろう。

ショートカットにしてみたら、もしかしたら。

まだ諦めない自分にも嫌気がさす。

でも気分転換がてらとか思い込んで。

美容院でシャンプーされている瞬間に少しでも癒されたいから、みたいな。

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