水増し作品による氾濫
「小説投稿サイト」であるはずのカクヨムだが、最近は小説としての体を成していない作品が多いな。無論、本作もそのうちのひとつだ。
自らを擁護する訳ではないが、エッセイや創作論などは、小説に準ずるものとして許容されるべきだと考えるし、現状そうなっている。この点について思うところは特にない。しかしながら、小説でもなく、かといってエッセイや創作論にも該当しない謎の「水増し作品」という第三勢力がここカクヨムに
僕が思わず自分の耳を疑った事例を紹介しよう。カクヨムには「レビュー」なる機能があり、自身の読んだ作品につき褒め言葉限定で感想を書き込むことのできるという代物だ。作家として活動している読者の皆様は、もし自作にレビューが寄せられたらどうだ。まあ嬉しいよな。近況ノートでレビュアーにお礼を書いたり、相互評価を行ったりするユーザーをよく見かける。
僕の場合、レビューが寄せられても心の中で「ありがとう」と言っておしまいなのだが、質が悪いのは、そうした自作に寄せられたレビューをまとめて、ひとつの作品として公開しているというユーザーを見かけた時だ。レビューなど、それが投稿された作品のレビュー一覧を見に行けばそこで表示できるというのに、何故わざわざ「作品」という形で公開するんだ? 売名目的以外に何がある?
ちなみに、この事例を見かけた経緯は、僕がかつてレビューを書いた作家様のひとりに「貴方が書いてくれたレビューを別途作品として公開するので、許可をください」という旨のメッセージが、全く関係のない僕の近況ノートに寄せられたことに始まる。ツッコミどころが多すぎて困るな。まず、レビューは作品に対する感想であって、読書感想文であり、他者の著作物だ。それ以上でもそれ以下でもない。見切り発車で勝手に公開するな。次に、レビューは個々の作品に対して寄せるものであって、それを纏め上げてひとつの作品として公開することには何の意義もない。そして、レビュアーの近況ノートなどにずけずけと上がり込んで「許可ください」と自分勝手な主張を繰り広げることでしか成立しない作品なら、そんなものやめちまえ。
(ちなみに、僕はその作家様のヘンテコな水増し作品に加担したくもなかったので「好きにしろ」とだけ言っておいた。「嫌だ」と言っても相手に気を悪くさせるだけだし、だからといって「良いよ」と言う訳もない。触らぬ神に祟りなしだ。)
今のは僕が直面した一例に過ぎない。他にも、カクヨム上で発生した他作家との極めて個人的なやり取りを公開したり、エッセイとも言い難いただの日記帳みたいな殴り書きがあったりなど、罷り間違っても「独自の創作物」とは言えない水増し目的の謎作品が増加している。
先述の例でいえば、他者から寄せられたレビューを「引用」して、そこからインスピレーションを得た上で、独自性のある作品に発展させていくというスタイルなら許容できなくもない。ただ、既存のコンテンツをコピペするだけの量産作品に何の意味があろう。
この手の作品は、ただでさえ素人作家が丹精込めて書き上げた作品も日の目を浴びることができない日陰ばかりのカクヨムにおいて、検索妨害という形でさらに影を落とすだけだ。真面目に頑張って独創性のある物語を紡ごうと努力している作家様の邪魔をするでない。
──おしまい。
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