AIは人間の競争意欲を奪う

 今更だが、何故カクヨムはAI作品と人間作家の作品を区別しないのだろう。例えば、ことスポーツ界においては身体能力や競技性の差異から、種目ごとに男子と女子は区別されているというのに。


 AI作品を否定する気は毛頭ない。目覚ましい技術革新により、昨今のAI技術は飛躍的な進化を遂げ、小説のみならず、イラストや音楽なんかもAIが独自に制作できるようになってしまった。ひと昔前は、人工知能による創作物など、何処か違和感があるものだという固定観念があった。イラストを書かせても人の腕があり得ない方向にひん曲がっているとか、音楽を作らせても不協和音ばかりだとか。しかし、近年の加速度的なAI技術の発展は、そのような違和感を取り除くどころか、人間の手により作られた創作物を遥かにしのぐようなクオリティを持った創作物を作る力をAIに与えてしまった。


 その良し悪しの判断は読者様それぞれの価値観に委ねるとするが、少なくとも、そのような状況を受けて、他の創作プラットフォームにおいては、AI作品と人間による作品は区別して取り扱われていることが多いと考える。


 では、カクヨムはどうか。今のところAI作品を排除して検索する機能もなければ、人間作家の作品と区別しようとする風潮もない。これ、常識的に考えて、拙くないか。例えるなら、女性同士の競技に女性を自称するトランスジェンダー選手が参入して、次々と世界記録を塗り替えていくようなものだ。トランスジェンダーという逆境に悩まされながらも、必死に技術を磨いている選手を否定する訳ではないが「それとこれとは話が別だろ」って言いたくなるな。


 このままでは、同じような現象が、このカクヨムというプラットフォームでも顕在化していくことになろう。AI作品が台頭していく世界で、既存の人間作家のモチベーション、そして彼らの競争心は保たれるのだろうか。


 AI作品のズルいところは、通常の創作物と比較して、製作時間が大幅に短縮されるところだ。また、ほとんど手間が掛かるようなこともなく、一定のクオリティが出せる。まさに、早い・安い・ウマいの典型であり、究極のジャンクフードと言えるだろう。それを我々人間作家が腹を痛めて生んだ我が子のような作品と同列に扱われ、平然と本棚に並べられている。カクヨムってとこは、苦労ある人間作家らに対するリスペクトが著しく欠如してやいないか?


 まあ僕に言わせれば、システムやプラットフォームとしての在り方に疑問が尽きないカクヨムという場所に、何の期待もしていない。今まで色々な提言をしてきた訳だが、そもそも僕のような素人風情にあれやこれやとツッコミを入れられている時点で、どうかと思う。カクヨムの未来、ひいては小説の未来は暗い。これからも右肩上がりで成長を続けるAIに対し、人間側が成長を止めればゲームセットだ。人間作家が努力を続ける必要があるのは前提としても、あくまで我々がで戦える土俵すら整備されていなければ、競争は廃れていく一方だ。


 ──おしまい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る