小説家を自称する脚本家たち

 会話文の鍵括弧の手前に、いちいち必ず発言者となる登場人物の名前を書くやつ。あれ、なに? アニメやゲームの脚本か何かか? するってーと、あれを書いているやつは脚本家を目指しているって訳か?


 登場人物同士の会話なんて、前後の文脈から、それぞれの鍵括弧の中身が誰による発言なのか大体察しがつくもんだ。それが分かりにくいということは、単に執筆者の表現力に問題があるか、読者の読解力に問題があるかのいずれかだ。少なくとも、鍵括弧の前に誰が話しているのかを明確化するための一手間は必要ないし、特に地の文少なめ会話多めの構成で進んでいく小説においては、人物名が当たり前のように書かれているから、そのうちゲシュタルト崩壊を起こしてくる。


田中「」

佐藤「」

田中「」

田中「」

佐藤「」

田中「」

佐藤「」


 こんな風に会話が進めば、もうそれ以上読む気は起きない。目が疲れちまう。こんな謎の台本は、田中さん役と佐藤さん役を演じる俳優にだけ渡すようにしてくれ。


 ──おしまい。

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