第5話 ダンボール

「はあ、よっしゃー!間に合った!

 危うく間に合わないところだったじゃねえかしょ…」


 そういって振り返ると、そこに翔の姿はなかった。







「お前、捨て猫か?」


 そのころ、俺はダンボールに向かってしゃべりかけていた。


「オスの1か月半ってとこか…。」


 ダンボールの中には、衰弱しきった小さな子猫がいた。


「ミィィ(だれだよおまえ)!

 ミィ(たちされ)!!」


 その子猫は、目は開いたばかり、やせ細っていて、体は冷え切っていながらも必死に威嚇していた。


「だいじょうぶだぞー、俺が助けてやるからなー。」


「ミィ(ほんとか)…!?

 ミィ(あぶない)、ミィミィン(だまされるとこだった)…

 ミミィミャァ(おれはだまされないぞ)!」


 幸い、俺の両親は犬・猫の保護ボランティアに参加していて、俺が猫好きなのも相まってよく猫の世話はしていた。

 こういうときは…


「よーし、いい子になー…。」


「ニャァ(なでるなぁ)…!

 ニャーァ(はんそくだぞぉ)…」


 俺は自分がつけていたマフラーをダンボールにそっと入れた。


「結構揺れるけど我慢してくれよ…。」


「ニャ(んぅ)…。」


 子猫はそう弱く鳴くと、マフラーにくるまって寝息を立て始めた。


「かわいいやつめ…。」


 そうつぶやくと、俺は駆け出した。




 隕石飛来まで残り15分…






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 子猫の()内の声は登場人物にはきこえていません。和訳(?)です。

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