第45話 それのはじまり
「ニナ、だいじょうぶ?」
トマはニナの手を引いて山道を登っていた。
「……うん……」
ニナはそう答えたがつらそうだった。
二人はカレデ山麓の国境を越えるとさり気なく歩調を落とし、山道の途中で避難民の集団から立ち去った。そうして少し道を逸れて上り坂を登り始めた。二人の目的地はロゴだが、避難民全体がどこに向かうかを確認したかったのである。
「ロゴに向かう人は少ないっぽいね」
高みから避難民の動きを見てトマはそう言った。
「……多分ローグルを目指している人が多いと思う」
ニナは力のない声でそう言った。
「ローグル?」
トマは初めて聞くその地名を繰り返した。
「ロゴはローグルの飛地が独立した集落なの」
独立というより見放されたというほうが適切らしいが。
「さすがアイニさんだね」
若い避難民二人が生活するには大変かもしれないが、二人の場合は他人との関わりが少ないほうがいい。そう思っての提案だったのだろう。さすがの慧眼だ。
そうして二人が休憩している時にそれは起こった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます