第45話 それのはじまり

「ニナ、だいじょうぶ?」

トマはニナの手を引いて山道を登っていた。


「……うん……」

ニナはそう答えたがつらそうだった。


二人はカレデ山麓の国境を越えるとさり気なく歩調を落とし、山道の途中で避難民の集団から立ち去った。そうして少し道を逸れて上り坂を登り始めた。二人の目的地はロゴだが、避難民全体がどこに向かうかを確認したかったのである。


「ロゴに向かう人は少ないっぽいね」

高みから避難民の動きを見てトマはそう言った。


「……多分ローグルを目指している人が多いと思う」

ニナは力のない声でそう言った。


「ローグル?」

トマは初めて聞くその地名を繰り返した。


「ロゴはローグルの飛地が独立した集落なの」

独立というより見放されたというほうが適切らしいが。


「さすがアイニさんだね」

若い避難民二人が生活するには大変かもしれないが、二人の場合は他人との関わりが少ないほうがいい。そう思っての提案だったのだろう。さすがの慧眼だ。


そうして二人が休憩している時にそれは起こった。

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