第35話 加護の真実
「いくつか説明をしましょう。あなた方はいろいろと誤解しています」
アイニはルードヴィヒたちを見渡してそう言った。
「まず、あの光は加護そのものではありません」
アイニは火口の光を指さしてそう言った。
「あれは地脈が光という形で顕現しただけのものです」
アイニは静かにそう言った。
「あんなものを見たことはないがな」
ロタールは皮肉気味にそう言った。が、アイニはそれを無視して説明した。
「あれは四大元素の力が均等に発現すればこその奇跡なのです」
アイニは淡々と言葉を続けた。
「判りますか?光そのものが奇跡の理由ではないのです」
奇跡の結果としてあの光が存在するのだ、とアイニは説明した。
「……どういう意味だ?」
ロタールはアイニを睨みつけるように先を促した。
「地脈について説明しましょう」
地脈とは四大元素の力の発露である。それはひとつの元素の力の場合もあるが複数の元素の力が混ざり合っている場合もある。それによりある場所では砂漠になったり、またある場所では水害や雪害に悩まされる事もある。
「なので単純に考えると地脈が均等に混ざった土地が最も肥沃となります」
まるで教師のようなアイニの口調に何となく皆が頷いた。
「しかし我らの祖先はさらなる恵みを与えられました。それがここ聖地ノレスです」
この地は極めて純度の高い四大元素の地脈が均等な位置に存在しており、祖先たちはさらに土地を開墾して高度をも均等に整備した。それによりその内部──現在の聖地ノレスという極めて豊穣な土地を作り上げたのである。
「そしてあの祠は言わば地脈の羅針盤です」
アイニは再び祠を指さした。
「他の地脈にこの場所を示すためのもので、あれ自体に制御機能などありません」
アイニの言葉にルードヴィヒは疑問を呈した。
「先程の小石は?」
ルードヴィヒの質問は当然のものだったが
「あれは地脈の乱気流のようなものです」
アイニの答えにルードヴィヒは納得の頷きをした。
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