第34話 加護の実態

「四大精霊の加護は既に顕現しています」

アイニは静かにそう言った。


「炎の精霊サラマンダーにより叡智を得て、大地の精霊ノームにより恵みを得て、水の精霊ウンディーネにより安らぎを得て、風の精霊シルフにより時の移ろいを得る」

アイニは祝詞の一節を述べた。


「それが精霊の加護です。それ以上の加護などありません」

アイニはルードヴィヒの目を見つめてそう言った。


「この地の豊穣こそが精霊の加護だと言いたいのか?」

ヴィンチ中将の言葉にアイニは彼を見て言葉を続けた。


「もしあなた方が、この地の豊穣さを得たいというのなら、方法がないではない」

アイニは再びルードヴィヒを見据えてそう言った。


「是非伺いたい」

ルードヴィヒは言葉にまで力を込めてそう言った。


「あの光を浴びればいい」

アイニは光の塊を指してそう言った。


「…………」

その場に居る全員が火口の方を見た。そして皆同様に困惑した。


「……どうやって?」

そう言ったのはボウ中将だが皆同じ感想を持った。光の塊は火口上空の中心部であり、空でも飛ばない限りは到達できそうになかった。


「例えば飛翔の術フライでもいいし単純にロープでもいい。今は無理ですけどね」

ロタールが声を上げる前にアイニの言葉が続いた。


「誰か、あの光に向かって何か投げてごらんなさい」

アイニがそう言うとロタールは周囲を見渡して兵士の一人を指名した。


「何か投げてみろ」

言われた兵士は適当な小石を拾い、助走をつけて石を光に向けて投げた。が──


ジュッ


小石は光の塊に到達すると蒸発して消えてしまった。


「……結界か?」

ロタールはそう言ってアイニに向き合った。アイニは無言で頷く。


「…………」

ルードヴィヒもロタールも無言でアイニを見つめた。質問するまでもない。


「例えば、この地の結界を解くなら、他三箇所の祠を打ち壊せばいい」

アイニは静かにそう言った。


「ただし祠を破壊しようとすれば」

今度はアイニが小石を拾って祠に軽く投げた。そうすると──


ジュッ


先程と同じように小石が蒸発した。


「…………」

その様子にルードヴィヒたちは無言になった。

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