聖域の公然の秘密
第32話 精霊の加護
「……これは……」
皇子ルードヴィヒはその光景を見てそれだけ言って絶句した。いや彼だけではない。ヴィンチ中将もボウ中将も周囲の将兵も呆然とその光景を見入るだけだった。
「正にこれこそが精霊の加護だ!」
ロタール参謀総長はそう絶叫した。そうして三人の聖女のほうを振り返った。
「よくもまあこんな秘密を隠しおおせたものだな聖女たちよ!」
ロタールは歓喜しつつ皮肉たっぷりに三人の聖女にそう言った。
「……秘密などと……」
アイニは顔をしかめてそう言った。
それは異様な光景だった。ノームの祠と呼ばれる祠そのものはせいぜい人が一人入れるかどうかという程度の何の変哲もない小さな祠である。しかしその背後──山の火口にあるもの、いや山の火口の上に見えるものは神秘そのものだった。
そこは光の坩堝だった。火口から光の塊が上っており、それに他の三方向からの光の塊が交錯している。しかもそれぞれの光の塊は光線ではない。光はある地点から唐突に発生して交錯しているのだ。これでは遠くからではこの光は認識できず、この火口近くに来なくては視認できない。
「さあ聖女たちよ!教えてもらおうか!この光は何から発生しているのだ!?」
ロタールは嘲笑と威圧を込めて聖女たちに詰め寄った。
「何から……?」
アイニはその質問にやや戸惑った。意味を測りかねたようだ。
「ここまで来てまだ隠すつもりか!?」
ロタールは一歩詰め寄り言葉をさらに荒らげた。
「やめろロタール!」
ルードヴィヒは弟を名前で呼んで掣肘した。それくらい彼も冷静さを失っていた。
「……失礼、だが我々の目的は正にこれだ」
ルードヴィヒは冷静かつ紳士的に聖女たちに説明した。
「この力、或いはこの力を操る神器なり秘宝なりを教えて頂きたい」
ルードヴィヒは目に力を込めて聖女たちに詰め寄った。
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