第29話 意味不明な手紙

「…………?」

その手紙を読んで第三軍団長アウザ少将は眉根を寄せた。意味が判らない。


アウザ少将はホープ山への調査隊には参加しなかった。呼ばれもしなかったし志願もしなかった。それどころか話すら出なかった。彼は当然のように留守部隊の臨時司令官のような立場となり、ノレス駐屯地に留まっていた。


そしてそれは彼に少しだけ利をもたらした。彼は皇帝の支持者ではなく、かと言って反対者というわけでもなく、その中間の立場だった。板挟みというほど両者に密接でもなく、あくまで職業軍人として任務を全うするのが本懐である。


従って彼は、中立派というより派閥と無関係な人間として、退役後のキャリアプランをしっかり考えており、その選択肢のひとつとして、地元の土木工事会社への天下りに心を砕く日々を送っていた。


そのため、天下りを差配してくれる反皇帝派への情報提供は、彼にとってはあくまでキャリアプランの一環であり、それは半皇帝派に入ったという意味ではないのだが、先方はどうも勘違いしているらしく色々な情報を送ってくるのだ。


そして、いつもはそういう手紙を受け取るのにはかなり気を使わなくてはならないのだが、今は皇子たちがみな出払っているので気をつかう必要がない。それが前述の「少しだけの利」である。


しかし当然、その手紙の内容は誰かに相談できるものではない。長年の副官にすら相談はできない。それくらいの警戒は必要だし、軍司令官としての要件だった。しかしこれは──


手紙は短く、内容は極めて抽象的に思えた。その内容は以下の通りである。



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皇帝は四大精霊の加護を求めている。

注意されたし。

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