第28話 ホープ山へ

「こんなに山道きつかったかしら」

アイニはついそう独りごちて慌てて口をつぐんだ。幸いアイニたち聖女は荷馬車を改造した簡易宿泊車の中に居たのでその言葉は誰にも聞かれなかった。


簡易宿泊車は最高幹部の四人に各一台ずつと、聖女三人を詰め込んだ一台の合計五台だけだ。それ以外は全てテントだし、当然大体の者は徒歩である。


「トマ、だいじょうぶ?」

ニナは外を歩いてるトマに声をかけた。


「大丈夫だけど体力落ちた……」

トマは少し苦しそうにそう言った。おかしいなあ、つい一昨年まで結構頻繁にキャンプとか行ってたんだけどな。まあ一年間ずっと座り仕事だったけど。


「ほれがんばれがんばれ」

一応は応援してるつもりだが半ば茶化すようにニナはそう言った。


「あんたたち仲いいんだね」

ニナとトマを見ていたシルヴァがそう言った。


「他に話す相手いないんだもん」

ニナは正直にそう言ったが、無意識で彼に親しみを持っている事に気が付いてない。


「……まあ、そうよね」

それ以上シルヴァは話をかき回さなかった。それにそのトマという青年がなかなか可愛い顔をしているのが少し気に障った。わりとシルヴァの好みストライクゾーンだ。


やっぱり美人は得よねえ、ほっといてもこんな可愛い男の子が寄ってくるんだから。

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