第27話 調査隊出発

調査隊は予想より遥かに大規模だった。なんと第一軍団と第二軍団からそれぞれ三聯隊ずつ動員されているのだ。編成はどちらも同じで歩兵聯隊、工兵聯隊、輜重聯隊である。実数は違うがトマの感覚ではノレス侵攻時の軍団がそのまま調査隊になったように思えてしまう。違うのはトマたち魔導兵が三人しか居ない事だろうか。


全体集合で幕僚長からの訓示があったが何も聞こえない。魔導兵は一番端で三人だけで整列しているので文字通りオマケ扱いである。元々肩身が狭かったがもはや居候のようだ。そして総員一万人に近い大調査隊はホープ山に向かって行軍を開始した。


「魔導兵は徴取を継続せよ」

どこかの将校からそう言われて三人はそれぞれの担当近くに配置された。つまりまあ徴取しつつのお世話係のようなものであるらしい。


「なんかすごい大軍だね」

ニナはトマを見つけるとそう言った。トマを見かけて少し安心したらしい。


「僕もびっくりだよ」

トマは正直にそう言った。トマも多くても百人くらいと思っていたのだ。


「そのホープ山って何があるの?」

徴取というわけでもないが、それらしい会話はしたほうがいいのでそう訊いた。


「ただの古い祠があるだけだよ?」

ニナはむしろ不思議そうにそう言った。ニナはそのノームの祠に行った事はない。つまりそれは祭祀としても重要と思われていないという事だ。


「逆になんか聞いてないの?」

ニナはトマにそう問いただした。これはニナからすれば当然の質問である。これだけの兵士を動員するなら何かしらの情報があるだろうと思ったのだ。しかしトマはその質問に適切な回答をすることができなかった。


「全然知らない。というか多分だれも知らないんじゃないかな?」

それでは回答になってないのでトマは自分が知ってる限りの事を話した。


「なんか、司令部が皇帝陛下のご子息や側近で固められてるらしくて、その人たちだけが今回の作戦の目的を知ってて、他の人間はよく知らないんだってさ」

こんな曖昧な回答じゃ怒るかな?と思ったが案外ニナはあっさり納得してくれた。


「そういうのってどこでもあるよねえ……」

ニナは聖女だが、法王庁の人間ではないので重要な情報からは疎外される事が多い。今回の降伏を知ったのも調印式の日取りまで決定した後で、情報の速さは一般人とほぼ変わらなかったのだ。いつも面倒な形式ばっかり押し付けてくるのにさあ。

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