第24話 動き出す司令部

「ノームの祠……!」

皇帝の長男にして幕僚長のルードヴィヒはその報告に目を輝かせた。


「そのようなものを今まで隠していたとは……」

ヴィンチ中将は苦々しい驚きを込めて呟いた。


「ようやく目的のものが見えましたね、幕僚長」

皇帝の次男にして参謀総長のロタールは兄にそう言った。


「先見隊は既に手配してありますが増員したほうが良さそうですね」

ボウ中将もそう申し述べた。


先述した通り、彼ら四人は四つ巴の敵対関係なのだが、それ故に皇帝カール三世から絶対的な協調関係を厳命されていた。もし誰かが抜け駆けをしたら、他三人から皇帝に報告されて罰を受ける事になっている。つまり皇帝カール三世はそれ程この地の調査に関心があり、それは絶対に成功しなくてはならなかった。


ならば何故元々仲の悪い四人をまとめて司令部にしたのか?というと、目的のものを奪取した時に、それを根拠に皇帝から離反する可能性を考慮したからである。


「…………」

列席する中で一番階級が低く、かつ唯一人皇帝の密命を知らず、かつ唯一の実戦指揮官であるアウザ少将は、あくびを嚙み殺して黙って会議の席に座っていた。もちろん彼に話しかける者は居ないし、彼からも質問や発言などない。


アウザ少将はこの侵略戦争の実戦を指揮して見事勝利を導いた立役者だが、それ以降はあまりやる事がなく、憲兵隊の司令官とノレスの民間人の調停のような事ばかりやっている。それとて司令官という名前の書類捺印係でしかない。


ノレスは既に占領地運営の段階に入っているので兵員の入れ替えが行われている。実戦部隊も既に1/4程は帰国し、代わりに憲兵や工兵などが動員され、ノレスの基地開発が進んでいる。アウザ少将自身も本国に帰りたいのだが、唯一の実戦指揮官である彼は、万一の事態に備えて帰国は許されないのであった。

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