第21話 帝国軍の調査

「どうもこの北側の山脈が怪しいですね」

征西軍第二軍団長ボウ中将の言葉に参謀総長ロタールは目を光らせた。が、言葉は発しなかった。無言のまま話の先を促す。


「文献では約二百年前にこの地に何らかの大規模掘削があったそうです」

ロタールはまだ言葉を発せずに先を促した。


「しかし法王庁にはそのような記録はありません」

そこまで言ってボウ中将は口を閉じた。


「……確かに怪しいな」

ロタールはようやく口を開いてそう言った。その言葉を聞いたボウ中将の目には僅かに冷ややかなものが混じった。ここまで言ってその程度の言葉しか出ないのか。


「少人数でこの地を調査させろ」

ロタールはようやく参謀総長らしい事を言ったが、それとて当たり前の指示である。


「はっ!」

しかしボウ中将は敬礼して命令を受託した。こんな事は単なる演技パフォーマンスであり、やったからと言って人格が損なわれる物でもない。そしてボウ中将は参謀総長ロタール、いや皇子ロタールの執務室を退出した。

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