第20話 聖女とマラソン
「明日からマラソンつきあって」
ニナはある時トマにそう言った。
「いいけどなんで?」
トマは正直にそう問うた。
「ヒマすぎて死ぬ」
ニナも正直に、というより身も蓋もない事を宣った。
と、いう訳で翌日になり二人での敷地内マラソンである。マラソンとは言うが実態はスロージョギングと言う方が正しい。ある程度のペースで走っては停まって休んだり歩いたりしながら気楽に雑談を交わしあった。
「へえトマにも彼女いたんだ」
トマの過去にニナはやや意外だった。
「彼女っていうか友達かなあ」
当時は彼女としては全然考えてもいなかった。
「ニナさんにはそういう人いないの?」
トマもニナに遠慮なくそう訊いた。
「いいなって思う人は居たけど話した事なかった」
「ニナさんならモテモテだと思うけどね」
トマはお世辞でもなくそう言った。そして言われた方も照れもせず受け入れた。
「モテても彼氏とはまた違うし」
ニナはにべもなくそう言った。
「ニナさんあんまり彼氏とか欲しくなさそうだよね」
トマは思ったことをそのままニナに言った。
「そんなことないよ。あ、イヤどうかなあ?」
トマに言われてニナは少し自分の心を覗き込んだ。
「……聖女辞めるために結婚は意識してたけど」
それも振り返ると本音ではどうだったのか自分でもよく判らない。
「聖女を辞める手段としての結婚と、恋愛や彼氏が別だったんじゃない?」
う、トマに言われた事がなんとなく自分の心の奥底にある本音のように思えた。
「そういうトマはどうなのよ?」
図星を突かれた気がして反射的にトマに質問を切り替えした。
「その女友達ってどんな娘だったのよ?」
こういう切り返しは男子より女子のほうが鋭いものである。
「どうと言われても……」
そう言われるとトマも答えに困る。別に不細工だったわけではないし性格が合わなかったわけもない。というより今になって思い返すと、なぜ自分はあの時あの娘と付き合わなかったのかがよく判らない。あれ?なんでだろう?
「もっといい娘とか、憧れの先輩とか居たんじゃないの?」
そうだ、そう言われて思い出した。あの頃は一学年上に学校のマドンナみたいな人が居て、どういう訳か彼女に操を立てるような気持ちがあった気がする。
「それ私を
聖女さまは休憩しながら鋭く痛い言葉を吐くのであった。
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