第18話 気楽な任務

ニナの聴取を終え、報告書をまとめて提出すればトマの一日の仕事はだいたい終わりである。当初は通信術士としての交代勤務にも組み込まれていたが、トマが聖女ニナと友好的な関係を構築したと判明するとそれも免除になった。


「君は彼女の相手をしていればいい」

デルカ班長はそう言ってトマを事実上ニナ専門の聴取官にした。とはいえデルカ班長には最終的な決定権はないのであくまで事実上だが。


そういう気楽な任務はトマだけではなかった。他にも被聴取者と良好な関係を築くとその人物専任となり、他の任務は免除されるようになっていった。


「うまくやりやがったな」

同期のカルメルはそう言ってトマを羨ましがった。


「まあ人間性の違いかな」

トマは少し皮肉気味にカルメルにそう言い、そして思い出した事を訊いた。


「そういえばあの時のお前の予想はなんだったんだ?」

トマは従軍中のカルメルの謎の言葉について問い質した。


「あの時は尋問か拷問でもやらされるのかと思ってた」

軍の通信術士の中には読心術リーディングを使える者も居る。もちろんトマもカルメルも使えないが尋問される方はそんな事は判らない。それをチラつかせて尋問なり拷問なりで自白を強要するのが魔導兵を動員した理由だと思っていたらしい。


そして実はカルメルの推測は的を射ていた。本当にそのつもりで動員されたのだが、思ったよりも抵抗が少なかったのでそこまでする必要がなかっただけである。


「考え過ぎだよ」

トマは笑って同期の暗い推測を笑い飛ばした。

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