第16話 徴取での出会い
「この『ウンディーネたちの真の王』とは何の事ですか?」
さあ?考えたこともありません。
「ノームというのはノーム族とは違うものですか?」
一緒なんじゃないですか?知らないですけど。
「この節のウォレード山とは現在のどこの事ですか?」
どこなんでしょうねえ。私
ニナの生活は劇的に変わった。朝のあの不味い野草料理はなくなり、代わりに今までお昼に食べていたような豪華で美味しいパンやオムレットが供されるようになった。朝の祈祷も聖殿に人が来れなくなったので自然と取りやめになった。
代わりに毎日ベリデオの軍人から祝詞や聖伝の内容を事細かに聞かれるようになった。最初は侵略者に対する恐怖もあってなんとか思い出して答えてはいたが、そのうちこの軍人たちはさほど怖くないと判り、丸暗記しただけの知識にも限界が訪れ、段々と聞く方も答える方も形式的になっていった。そんなの
「そんなことを聞いてどうするの?」
ある時ニナは聴取に来た若い軍人にそう聞いた。今までニナに聴取してきたベリデオの軍人たちもさほど威圧感はなかったが、その中でも目前のこの人物はかなり与し易く見えた。黒髪のくせっ毛で背もさほど高くない。ニナと同じくらいだろうか。
「……さあ……」
その軍人はぼそっとそう言った。それはニナの質問に答えたというより、独り言のように聞こえた。その素朴な反応にニナは興味を持った。
「あなた自身が判ってないの?」
ニナはその軍人にそう詰め寄った。そう言うとその軍人は左右を見渡してさらに小声でニナの質問に答えた。
「……正直、僕たち自身、この戦争からして全然わけが判らないんですよ……」
ニナは少しその軍人に好意を持った。今までもさほど怖くはなかったが、この目前の青年ほど素の人間らしい反応を示したのは初めてだったからだ。
「あなた、お名前は?」
ニナはとりあえず彼の名前を聞いた。
「トマ・オジエといいます。一応伍長ですがトマでもオジエでもいいです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます