軟禁される聖女
第14話 軟禁通達
「もう降伏
先々代聖女アイニは驚いて言葉を繰り返した。
「人民の安寧は約束するという条件があり聖上は断腸の思いで……」
使番の兵士はアイニにそう言上した。
どんなものだか、とはアイニは言わなかった。アイニからすれば法王ウァレンティヌスは枢機卿への出世のために大伯母を捨てた男である。枢機卿以上への出世のためには、逆に聖女との親密な関係はあまり好ましくないとされているからだ。
「……つきましては真に申し上げづらいのですが」
使番は往訪の真意を告げた。なんと聖女および歴代聖女は事実上軟禁との事だ。
「
アイニは驚いてそう訊いた。
「ベリデオの調査には古い知識をもつ人間が必要との事で……」
使番は心苦しそうにそう言った。聞けば聖女たちだけではなく、法王庁の高位聖職者も同様の扱いらしい。
「私たちには財産になるような口伝なんてありませんよ?」
思わずアイニは標準語でそう返してしまった。決まりがある訳ではないのだが、聖殿と法王庁の公式会話はノレス語を使うという風習があるのだ。
「誠に恐れ入りますが……」
使番は顔を歪めてそう言った。聖殿への使番になるくらいだから、この人物は聖殿や聖女に対する畏敬の念が深い。そういう人物が言うのだから言葉は重かった。
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