考古学者の驚き

第9話 予想外

「……君が、いやあなたが岩漿がんしょうの異術士?」

ケレブは驚きながらその青年に問うた。


「……ああ、まあ、はい……」

青年はなぜかためらいがちにそう肯定した。


ケレブはいろいろと予測はしていたがこれは予想外だった。その青年はかなり若いし、それほどいきった人間には見えない。むしろ引っ込み思案の印象すらある。


「……あなたに依頼があるのだが、話を聞いてもらえるだろうか?」

ケレブは丁寧にそう言った。第一印象だけでは人は判らない。まずは常識的に接してみるべきだ。しかしその反応はこれまた予想外だった。


「受けます!」

まさかの即答である。そして青年は聞いてもいない事情を喋り始めた。


「いやあ助かりました!この前の仕事でやらかして報酬が半減しちゃったんですよ。この家のローンも残ってるし本当にどうしようかって思ってて。あ、やらかしたって言ってもアレですよ?奪還予定の居城を半分焼いちゃってその修繕費で持ってかれたんですよ!ひどくないですか!?そういう契約じゃなかったのに!」


とりあえずケレブにはいくつか判った事がある。この青年が「岩漿の異術士」だとしたら、予想より朴訥な性格で、かつ世慣れておらず、しかもかなりお金に困っているらしい。噂の実力はまだ判らないが、話を聞く限りでは嘘はないように思えた。


「ああじゃあ、まあまず、その、実力を見せてもらえないかな?」

足元を見たわけではないがケレブはやや強気に出た。この青年相手だとそういう方が話がうまく進むように思えたからである。


「了解です!」

青年も元気よくそう応じた。どうも誰かから指示されるのに慣れているらしい。

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