第8話 みな逃げる聖位

先々代聖女アイニは十年間聖女を勤め、結婚によりめでたく退位となった。これは近年稀に見る長期在位である。しかし困ったことがある。次代の聖女は当代が指名するのだが、それをニナにするか、従妹であるシルヴァにするかでモメたのだ。


「ニナちゃんやってよ!」

シルヴァは真剣にそう言った。


「ニナちゃん可愛いからすぐ結婚できるでしょ!」

まあ当然といえば当然の理由である。


「あたしまだ15歳だよ!?」

ニナも負けていられない。


「結婚なんてまだまだ先だし!」

仮に20歳で結婚するとしても五年もあんな事しなくてはならなくなる。


「あんたたちやめなさい!」

共通の叔母であるアイニは大声で二人を叱った。


「シルヴァ、あんたやりなさい」

アイニはおごそかにそう言った。


「仮にニナに先にやらせたって次はあんただ。行き遅れたらあんた大変だよ」

その一言で事態は決した。


かくしてアイニ退位後にシルヴァが聖女となり、四年間の「お勤め」を経て、去年めでたく結婚して退位した。そしてついにニナに御鉢が回ってきたのであった。

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