第5話 察しの良し悪し

「……オジエ、知ってるか?」

同期のカルメルが声をかけてきた。


「なにを?」

トマはカルメルに逆に問うた。


「俺たちは前線に投入されるんじゃないらしいぞ」

カルメルの言葉に思わず叫びそうになった。


「……え、そしたらラッキー?」

トマは喜色を浮かべてそう問い質した。


魔導兵として実戦投入されたなら、誰もが思うのは魔法攻撃前提の最前線突入である。トマも炎の術ファイアーボールくらいは使えるが、使えてせいぜい三回、それを使いきったらもう自力で撤収できるかどうか。いや正直な話、自力での撤収もできず、もちろん回収もされずで、そのまま使い捨てにされる可能性も考えていたのである。


「……お前、気楽だな……」

カルメルは憂鬱そうにそう言った。


「なんでだよ」

トマはカルメルに反論した。


「考えてみろ、俺たちの本来の任務は何だ?」

カルメルは眉間どころか鼻にも皺をよせてトマにそう言った。


「情報下士官だろ?」

トマはあっさり言った。つまり遠隔地との通信術士である。


「……なにか察する事はないか?」

カルメルは横目でじろりとトマを見ながら言った。


「……?」

トマがそれに答えられないうちに休憩終了の号令が下った。

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