第2話 ロゴ避難地区

ロゴは思った以上に発展していた。全体的に荒屋あばらやは多いが、役所も警備兵の詰所もあるし、市場も食堂も酒場もちゃんとある。心配していた水場や旅館だけではなく、荷駅までも整備されている。機能だけなら都市と言ってもいい。二人は荷駅に馬を預けて徒歩で目的地に向かう事にした。


「役所の裏手でしたね。その異術士さまがお住まいなのは」

ラザーの声にやや苦笑の気配がある。なにせ自称「岩漿がんしょうの異術士」である。


今回に限らずこの調査は数週間の泊まり込みを前提としている。たとえ腕は確かでも意思疎通コミュニケーションに難がある人間は論外なのだが、自称からしてすでに怪しい。はてさて、どんな勇者さまだか賢者さまがでてくる事やら。


役所左側の大通りを進むと目的地であるらしい家が見えた。いや家というより──


「あれは……教会?」

ラザーはその家を見ての印象を声に出した。


「……では、ないな」

ケレブはよく観察して助手の推測を否定した。


見た目は教会のような作りだが、円字が掲げられておらず聖旗もない。教会を模したというより、教会の廃墟を修繕して住んでいるように思えた。


二人が建物を見ていると中から人間が現れた。いや現れたというより丁度外出だったのだろう。まさか当人とも思えないがケレブは声をかけた。


「失礼、こちらは岩漿の異術士さまのお宅で?」

ケレブはその人物を観察した。若い男で背はさほど高くはない。


「え?はい。どちらさまですか?」

男は驚いた、というより呆気にとられたようにそう応じた。

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