第34話 33 夢の喫茶店



 何となく話の流れが分かってきた、ような気がする。

どういう訳か知らないが、ぺペンギンさんが、とある星から地球に召喚されて、マスターと会って、珈琲を飲んで、お孫さんに会って、それからのお付き合いらしい。


 既に、外も明るさを失いつつあるので、私達は既にコーヒーブレイクを終了し、後片付けもすまし、今は晩御飯の支度に取り掛かっている。


 今夜は、コロッケをレタスの上に置いてみた。

それだけでも見栄えは良いし、ぺペンギンさん用のシラスの横にはサーモンを置いてみた。

おう、一品ものやのうて、二品か、と言って喜んでくれている。

晩御飯が終われば、また食後の珈琲を飲もうかなどと思っている。


 私は、食べ終わると食器を綺麗に片付けて珈琲を淹れ始める。

今夜はビールを飲んでいない。

ぺペンギンさんは相変わらずウイスキーを飲んでいる。

但し、いつもの安いウイスキー。

シングルモルトは既に飲み干されている。


 ビールをやめて、浮いたお金で珈琲豆を買おうと思っている。

いずれ、生豆を買って、自家焙煎、ミル、サイフォン、自分喫茶店、小さな夢だけど、一日を楽しく、喜びに感謝、ほんの少しだけ希望の意味が分かってきた、ような気がする。


「今度の休みもあの喫茶店、行くん?」


「はい、日課になってきましたから」


「そうか」


「ぺペンギンさんも一緒に行きますか?」


「ワイ? 遠慮しとくわ」


「どうしてですか? 既に正体もバレているんですから大丈夫じゃないですか」


「お前はアホか、急に客来たらヤバイやろ」


「ああ、確かに。でも、お客さんって殆ど来ませんよ」


「お前な、もしも突然客来たら、ワイ、ぬいぐるみの真似せなあかんやないか」


「確かに」


「まぁ、マルセリーノが宜しゅう言うてたって伝えといて」


「マルセリーノ? 誰ですか」


「ワイ」


「え?」


「名前言うてへんかった? ワイの名前、マルセリーノやで。地球の言葉で言うたら、宇宙で一番純粋な者、いう意味」


「聞いていませんでした。だからと言って、今更マルセリーノさんなんて呼べません」


「せやったらぺペンギンでええよ」


「はい、ぺペンギン」


「アホか?お前? 誰が、敬称を略してもええて言うた? 呼び捨てはあかんやろ! この底抜け!」

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