第30話 29 乾杯



 コロッケ丼を食べ終わって、半分残った缶ビールじゃなくて発泡酒を少しづつ飲む。


「先週の話なんですけど」


「何?」


「私、性懲りも無く、また酔っ払ったみたいですね」


「ああ、でも、探し物が見つからん、ばっかり言うて、殆どワイばっかり喋べっとったで」


「そうなんですか、探し物ですか」


「覚えてへんし、見つかっても無い、みたいやな」


「はい、でも次の日の朝、希望って何かな?って考えながらミルクコーヒーを飲んでいました」


「まんざら、忘れ切ってた訳でも無いみたいやな」


「でも、見つかりませんけどね」


「あはは、そない簡単に見つかったら、めっちゃ、ちっちゃいもん、かもしらんで」


「でも、見つからないと何のために生きているのか分からなくなりそうで」


「今に、満足してたらええやん」


「そうですね、生きていられるだけで満足、それも良いですよね」


「もう一回、乾杯しょうか」


「はい、乾杯です」


 そう言って、ぺペンギンさんはお猪口を短い翼で持ち上げたので、私も軽く500mlのビール缶じゃなくて発泡酒を持ち上げた。

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