第29話 28 感謝



 やっぱり毎晩飲んでいる。

そして、今夜は休日の前日。

少し、多い目に飲んでみようか?

いや、やめておこう。

休日の前の夜だからといって飲み過ぎれば、自暴自棄。

いつものように、缶ビールじゃなくて発泡酒を一本で良いや、と思う。


 ただし、今夜は贅沢に、コロッケ丼だ。

炊き立てのご飯の上に、目玉焼きを乗せて、その上にコロッケを乗せて、ソースではなく、お醤油をかけて食べる。

申し訳ないが、ぺペンギンさんには、昨日と同じシラスだ。

でも、ウイスキーは奮発してシングルモルトを買って帰った。

いつも話し相手になってくれるお礼だ。


 感謝。


 ぺペンギンさん、ありがとう。


「おう、誕生日か? いつもと違う晩飯やないか」


「ええ、生きている自分に感謝の誕生日です」


 そう言えば、誕生日なんてすっかり忘れていた自分を思う。


「ほう、目玉焼き一つ増えただけでお祝いのディナーか」


「ほな、ワイも、いつもと違う?」


「いいえ、昨日と同じシラスです」


「な、何やてー、お前なー、自分だけで祝おうってか!」


「いいえ、今夜はシングルモルトを用意させていただいております」


「許したる」


「ありがとうございます。感謝、です」


「感謝はええけど? 何の?」


「分かりません」


「まぁ、ええわ。その気持ち、ワイやのうて、自分自身のものにせえよ」


「はい、では乾杯しましょう」


「おう、乾杯や」

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