第28話 27 雨の日



 雨を理由に仕事を休むこともできず、作業所に来て、お菓子の箱詰め作業をしている。

粛々と作業をしている変わらない一日。

そう言えばぺペンギンさんが言っていた。

「あと何十年と生きるのに、と・・・」

あと何十年も続くのだろうか?

今、無くなっても良いのだけど。

未来は繋がっているとぺペンギンさんが言っていたことも思い出す。

似た様なものが集まってくる。

思いも同じように似た様なものが集まってくると。

嫌だな、って思う。

こんな自分と同じ様な奴らが集まって来たら耐えられないよ。

一人きりが良い。

でも、ぺペンギンさんには居てほしい。


 部屋に帰ると、鮮魚の切り身を冷蔵庫から出して氷を添える。

自分用のコロッケをフライパンで温めて、昨日残った冷たいご飯を茶碗によそう。


「ねぇ、ぺペンギンさん、未来は繋がっているんですよね?」


「ああ、そうやで」


「私、また、生ける屍に戻ってしまいました」


「うん、せやな」


「未来は繋がっているんですよね」


「何回言うの?」


「未来か・・・」


「あのね、お前の気持ち、分かるよ。未来なんて要らん、思てるやろ?」


「はい、誰のために生きるなんて、自分のために生きる気力も無い者にはどうでも良いことですよね」


「うん、それでええと思うよ」


「誰かのためにって、いつか、ぺペンギンさん、言ってましたよね」


「ああ、言うてたな」


「あれは、何なんでしょう」


 私は、呟くように言った。


「あれはな、お前が生きようとしてくれたから言うただけやねん」


「生きようとすれば辛いことに出会う」


「そうやな。その辛いことを自分の成長にする、って言う人もいてる。どんなに辛くても耐えられへんくらいの苦労を神さんは与えへん、って言うてる人もいてる。人生とは楽しいもんなんや、って言うてる人もいてる。どれもこれも生きるための言葉や」


「でも、そんな言葉、私には届きません」


「届くはずなんか無い、とワイも思うよ。でもな、生きるための言葉って何で生まれて来たんやろ? 命ある限り生きていかなしゃーないからやん。とにかくや、自ら命を絶つようなことは二度とするな。今を生きろ。そう、この瞬間だけを生きてたらええ。恐れるような未来は、未だ来てへん、未来は繋がるって言うたやろ? そのお前の思いが繋がっていったら碌でも無い未来になる。それやったら、未だ来ぬものを勝手に想像して不幸へ繋げていくくらいやったら、何も考えんと今を生きろ。生きるって言うことは、そう言う事でもあるねん。今は今を生きろ」


「ええ、今だけを」


「そう、今や、それだけでええ」

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