第24話 23 休みの日
ある日、葉子さんが突然、休んだ。
作業所にいつまで経ってもやって来ない。
何故、休んだのかを知っている人はいるかも知れない。
こんな時に困るのは人付き合いかも知れない。
何の情報も手掛かりもないのだから。
三日間休んでから葉子さんは出勤してきた。
職場のみんなに突然休んだことを謝っていた。
「大変だったわね」
とか、色々の言葉を掛けられていた。
息子さんが熱発してずっと看病していたらしい事が会話の内容で分かる。
葉子さんは私の元にも来て、
「ご迷惑をお掛けしました」
と決まり文句のように挨拶をした。
その日は、葉子さんとは喫煙所でも会わなかった。
食堂兼休憩所の冷蔵庫には私用のお弁当は無かった。
あの日以来、お弁当は無かった。
アパートに戻り、ぺペンギンさんと晩御飯を食べている。
以前の生活に戻った。
そう、以前の生活に戻っただけなんだ。
でも、一つだけ違う事がある。
何故なんだろう、ぺペンギンさんは私に説教っぽい話をしなくなった。
静かな夜が続いた。
寂しい。
とても寂しくなってきた。
生きることの不安も蘇って来た。
葉子さんのお弁当も無くなって、でも、今はぺペンギンさんが居るというのに。
今はいい、ぺペンギンさんが居てくれている。
何も喋ってくれなくなったけど、傍にいてくれるんだ。
まるでぬいぐるみのような姿をしたペンギンが傍にいてくれている。
あの時、死んでいたなら、こんな寂しい思いをしなくても済んだのか、などと以前の私が語りかけてくる夜もある。
今夜も目覚まし時計は静かに時を刻んでいる。
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