第15話 14 捨てるべきもの



 だからと言って何をすれば良いのか?


 総合病院で働き、人間関係に疲れ果て、生きる気力を無くし、生きていてもしょうがないと、覚悟を決めたものの、今、こうやって生きている。


 ただ生きている。


 それだけで充分だと思っている。


 それだけでは駄目なのか?


 他に何が足りないと言うのだ?


 もう、望むものなんて何も無い。


 今、生きている。


 私は、それだけで充分だと思っている。


 他に何が必要だと言うのか?


 何もない。


 有る筈も無い。


「分かるよ。その生き方。でもな、お前の、その生き方いうやつはな、必ず躓く。なんでやと思う?」


「言っている意味が分かりません。満足していれば躓くことなんてある筈ないじゃないですか」


「満足って、そないな所に有るもんなんやろか? 望むものを、いや、望むことを捨て去る事ができた。それは満足なんだ。それやったら、其処には何らかの信念みたいなものがあるんやないやろか? 今のお前を見てて感じるんは、諦め、みたいなもんやねん。違うかな?」


「そうかもしれませんが、一歩譲って、そうだとしましょう。でも、譬へ諦めであっても、今の現実を見て受け入れることは大切な事だと思います」


「うん、お前の言うてる事は正しい。ワイの言うてることとは食い違いがあるけどな。受け入れるって、なんでやろ? そんな簡単なもんやろか? 言葉で気持ちを隠してるようにしか聞こえへんのよ」


「私は、今の生活に満足してはいけないのですか」


「せやね、満足するいうことは悪いことでは無いと思う。でもな、何に満足するかって事が大切なんやないやろか? 満足してる対象に問題がある時もあると思わへん? お前の満足は、必ず躓くってワイ言うたやんな? ええか? ちょっと聞いてくれへん? 普通でやで、望みを捨て去ることで満足できてる奴ちゅうのんわな、その先を見てる場合が多いねん。逆の場合は、何かに引き摺られてる奴や。今回の場合は、それやない。でもやなぁ、ちょっと近いような気もするけど、それは置いとこか。さっきも言うたやろ? お前は傷付くことを拒んでるだけやって。そんな思いで満足してる奴いうのんはな、何かの望みを持った時、必ずと言ってええくらいに躓くねん。いや、動かれへんねん。分かるかな?」


「でも・・・」


「やかましいわ! ええ加減にせい! でもも、雲も、桃もないんじゃ。何回言わすつもりやねん! 未来を、今、未来を信じんと、いつ信じるんじゃい! お前が分かるまで何回も言うたるわ、恐れるな! ええか! その恐れを捨てろ!」


「・・・」


「捨てれるな? 捨てれるやろ? すぐにとは言うてへんねんで。でもな、捨てなあかんもんは結構、みんな持ってるねんで。お前に少しだけ、未来の話をしたろかな?」


「え? ぺペンギンさんは、占い師だったのですか?」


「お前はア・ホ・か? ペンギンのカッコした占い師が何処に居るねん。ワイは、お笑い芸人か! このスカポンタス!」

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