第12話 11 朝日
あれから再び目を瞑ると、ぐっすりと眠ることができた。
不思議と目覚めは良かった。
何処からか漂う良い香りのせいだろうか?
「起きたか」
ぺペンギンさんが此方を向いて言う。
何処から出して来たのか、ぺペンギンさんはエプロンを掛けている。
「飯と味噌汁や」
私がキョトンとして見ていると、
「味噌汁だけやったら不満か?」
とぺペンギンさんが聞いてくる。
「いえ、あの、エプロン」
「料理するのにエプロン掛けるんは地球の常識やろ」
と返してくる。
何故かそれだけで、新しい日が訪れたような気になる。
「米も少ない、味噌汁も一杯だけや、それでも食べなあかん。人はな、本来、口からしか栄養を取ることがでけへんねん」
私は、
「はい」
と元気よく答えると、
「もしかしてお前、光合成できたりする?」
「え?」
「枯れ果てた枝みたいな体つきして、まぁええわ、座り、ほんで食べようや」
ぺペンギンさんの作った味噌汁は美味しかった。
具材が何も入っていないのに美味しかったんだ。
「美味いやろ」
とぺペンギンさんが聞いてくる。
「はい、美味しいです」
「うん」
それだけ言うと、ぺペンギンさんは小さな器から味噌汁を飲む。
そして、ふと私は思う。
この味は?
この味は、そうだ、思い出した。
この味は、妹と二人で食べた、味噌を溶かしただけの味噌汁。
美味しい、本気で美味しいと思える。
「思い出したか? 昨日の夜、偽物の妹さんにお別れの挨拶したんやろ? 今度は、いつか会える時まで、本物の妹さんに会えるまで、胸を張って生きてきたよ、って言えるように、下界の地獄で頑張ろうや、下界に極楽浄土なんかない。けど、案外地獄だけでもない。それに、そんな現実に会えるように成るように、自分の世界を自分で作っていこうやないか」
私は、お味噌汁の味のせいか、素直に頷くしかできなかった。
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