第7話 6 少年期
中学校に入った。
特別な期待もなかった。
楽しいことは一瞬にして過ぎ去る。
その一瞬とは10分程度のこともあれば、20分くらいの時もある。
友人との会話、ただ会話できるだけで嬉しかった。
心が通じ合えたなんて思えなかった。
会話をしているだけで全てを忘れることができた。
それだけで良かった。
家に帰れば、洗濯物を取り入れ、米を洗う。
妹は小学生で、飼い犬のご飯を作り、散歩に行く。
犬のご飯は、残飯だったから食べ残しの味噌汁だけだったこともある。
此の飼い犬は、妹の愛情を一番の食事にして生きていたようにしか思えない。
私への苛めは中学3年生の頃から始まった。
受験を控えた時期に。
苛めを煽った奴は、小学生の時に私を苛めた奴だ。
此の大切な時期に、なんと奴は私のクラスと同じになったのだ。
此の時ほど親友を欲した事はない。
いじめの内容は喋りたくない。
思い出したくないからだ。
つまらない過去だと捨てておきたいからだ。
それでも私は捨てきれず、夢で思い出しては叫んでしまうことがある。
なんて、つまらない時期であったのだろう。
「お前、それでも高校に入学したんやろ?」
「行きたくはなかったんです。でも、高校くらい卒業しないと、って思ってしまったんです」
「学校に行くにはお金も要る。食べやんと生活もできひん」
「はい、感謝はしています。でも、親は、義務教育までが親の義務だから、ここからは借金だ、返してもらうよ、って言ってました」
「で?」
「働いてから、十年かかって返しました」
「それって、文無し状態?」
「はい、ペンギンさんは私に結婚するって言いましたけど、そんな資金なんて、これっぽっちもありません」
「幸せは、金で買うもんやない」
「分かっていても、それは独りよがりで、相手は、そう思ってくれないのが現実だと思っています」
「なるほど、それで?」
私は、それからも喋り続けた。
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