第125話 隠し扉

 ホルトの屋敷の地下室をその後も騎士団と共に調べた結果、一人の騎士が隠し扉を発見する。その扉自体には魔法が掛かっていない様だったので、騎士たちに頑張って扉をこじ開けてもらう。意外と簡単に扉を取り外す事ができたので、光魔法のライトをその部屋の中に送り、グレゴール団長と扉の外から部屋の中を確認する。




「倉庫ですかね? 本や魔石……床に置いてあるのは石? ……かな?」




 扉の中は一畳もないほど狭く、腰より上の高さの壁には棚が何段かつけられており、色々な物がごちゃごちゃと置かれており、床にはいくつもの石が転がっていた。




「これらを何に使っていたかわかるか?」




 グレゴール団長が振り返りした質問に、執事の男性が首をかしげながら答える。 




「……ホルトさまはゴーレムの研究を一時期とても熱心にしていましたので、その材料かもしれません」




 ゴーレム? あの泥とか石で作られたロボットみたいなやつだよね……? 水魔法の人が研究できるという事は無属性なのかな? イメージ的には土魔法っぽいけど……。




「ゴーレムとは土魔法が使えないと作れないと聞いたことがあるが……ホルトは水魔法以外にも土魔法が使えたという事か?」




 ああ、やっぱり、土魔法なんだ。っていうか、魔法知識が遅れているこの国のグレゴール団長が知っているって事は、ゴーレムが土魔法で作られるという事は、この世界では常識レベルの知識なのかもしれない。




「…………ゴーレムの材料として土属性の魔石も大量に買っていましたので、やはり使えたのは水魔法だけだったと思います……いや、もしかしたら……」




「ん? どうした?」




「いえ、今となっては私の知っていたホルトさまは、どこまでが本当だったのか分からなくなってしまいました」




 まあ、確かに混乱するよね……今は詳しくは教えられないけど、実際に最後の方はレッドキャップだった訳だし……。




「……グレゴール団長、後はこの倉庫の中身を調べるだけですし、執事さんには、もう自分の仕事に戻ってもらっても良いのではないでしょうか?」




「そ、そうですな……協力を感謝する。後は我々に任せて少し休むと良い」




 もう精神的に限界だったのか、執事の男性はその提案をあっさりと受け入れ、青ざめた顔で部屋から出て行った。


 その後は狭いのでオレだけが倉庫内に入り鑑定をしていき、特に問題ない物だけを先に騎士に渡して運び出してもらう形で倉庫内を調べていく。




「ふ~っ! あとは本とこの大量のメモですね。え~と……」




 棚に置かれた本の題名にはゴーレム作成の素材と魔法円、死霊術、魂の隷属、魂の切り離しと定着、召喚に関する考察などなど負のイメージが漂う本ばかりが並ぶ。




「ケイさま、何か手掛かりはありましたか?」




「え~と……運び出した魔石も土属性の物が大半でしたし、本もゴーレムに関するものがあったので、ゴーレムに関する何らかの実験をしていた可能性は高いかもしれません。これなんですが……」




 そう言ってゴーレム作成の素材と魔法円の本をグレゴール団長に渡す。




「…………これにゴーレムの事が書かれていると……? 私も王国の文字なら多少、読み書きが出来るのですが……」




「えっ? ああ、そうか……。その本にはゴーレムに作成について書かれているようです」




 勝手に言語理解で読めちゃうから気付かなかったけど、よく見たら確かに王国の文字ではないな……。




「なるほど、ケイさまは帝国の文字も読めるのですな。さすが教師として招かれただけの事はある……」




 えっ? 帝国の文字なんだ……。ていうか、この本、やばそうだけど全部複製したいな。




「はは、偶々、習っていただけです。あの~良かったらですが……私が本とメモの内容を調べて、簡単にですが王国の文字で報告書を書きましょうか……?」




「今、こちらからどうやってお願いしようか考えてた所です。どうかよろしくお願いいたします」




 あわよくば複製したいという気持ちから言いだしたものの、想像以上に感謝されて少し後ろめたさを感じる。もしかしたら、帝国の文字を読める人もそんなに多くないのかもしれない。一応、外国語になるのかな? 




 出来れば本だけ持ってさっさと帰りたかったが、その後もしっかり働き、倉庫の中身を全て鑑定して運び出すのみとなった。




「ケイさまの見立てでは、倉庫には危険なものもなかったようなのでその点はよかったのですが、ホルトの所在が分からないどころか手がかり一つないとは……」




「そうですね。無事だと良いのですが……でも、本とメモを読んでみたら分かることがあるかもしれませんし……」




「そうだと良いのですが……。どちらにせよ、ここの荷物が運び終わったら、我々は一旦、戻りましょう。帰りの馬車はどうなっておりますか?」




「えっ? 馬車ですか? 多分、入り口で待ってくれていると思います」




「おい、そこのおまえ、この箱を入り口に停まっているケイさまの馬車に運んで差し上げろ」




「はいっ!」


 


 指名された若い騎士が箱に入った本とメモを運んでくれるようだ。




「それでは先に出発して下さい。私はこちらに残る騎士に指示をだしたら、すぐに追いかけますので……」




「わかりました。それではお先に失礼します」




 一瞬、この人たちだけで平気なのかな? とも思ったのだが、全員にずっと付きっきりでいられる訳はないので、何も起こらない事を祈りその場を後にした。










 ♦ ♦ ♦ ♦










「それじゃあ、報酬の銀貨二枚と大銅貨二枚ね。あと冒険者プレートも返すわね……」




 そう言うと受付の女性はプレートを怖い顔でまじまじと見つめる。




「あの……」




「ああ、ごめんね! ここにあなたの名前が刻印してあるから一応、確認でね。……ルーナちゃんでいいのかな?」




「は、はい」




「もしかしてなんだけど……あなたって最近、ジュリアって娘と一緒に冒険者になった娘よね?」




「はい……」




「随分と見違えちゃったわね……コートはちょっとボロボロだけど、中の服はお貴族様でも中々着れないような上等な生地じゃない」




「えっ! やっぱり、これって高いものなんですか?」




「そうね、金貨一枚どころじゃ買えないんじゃないかしら……」




「き、金貨……」




 高いんだろうなとは薄々気付いていたけど、まさか金貨だなんて……。




「知らなかったの? 気をつけなさい。奪おうとするやつもでてくるかもしれないから、その服をくれた人とは離れないようにしなさい」




「えっ! はい、離れません……」




 我に返り、慌ててみんなに聞かれていないか振り返って様子を疑う。




「うふふ、お仲間が待ってるのね、引き留めてごめんね。それじゃあ、頑張ってね」




「は、はい。ありがとうございました」




 硬貨とプレートを受け取り、頭を下げてみんなの下に向かう。




「あっ!」




 受付の女性の声に、何事かと立ち止まり振り返る。




「私はエリンよ! 大抵、いつもいるから私がいたら、私の所に並んでね。平民だから怖くないわよ」




「はい!」




 私はもう一度、頭を下げてみんなの所へ向かった。




♦ ♦ ♦ ♦




〇お金


銅貨  10円 →1リーン

大銅貨 100円

銀貨  1000円

大銀貨 10000円

金貨  100000円

大金貨 1000000円

白金貨 10000000円

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