第116話 魔力の源
砂時計の砂が落ちきったので、読み書きの授業を終わりにする事にする。
「そろそろ時間かな! それじゃあ、渡したノートとクレヨンの箱に自分で名前を書けたら休憩にしようか」
「は~い!」「やった~!」
ローラは丁寧に自分の名前を書くと、オレの下まで駆け寄ってくる。
「ケイ先生! できました!」
いつの間にかケイ先生呼びに……これからそう呼ぶのね。
「おっ! 綺麗に書けたね! じゃあ、ローラは休憩にしよう! 手を洗ったらお菓子を食べていいよ」
「やった~!」
「あ~~っ! 待って~! お姉さま! ずる~い!」
「ずるくないわよ! アシュが遅いのが悪いんでしょ」
「だってアシュはお姉さまより字の数が多いんだもん」
「じゃあ、食べるのは待っていてあげるから、早くしてよね! お母さま見て! 私が自分で名前を書いたのですよ」
ローラはパトリシアさまに褒めてもらうと、嬉しそうに抱きついて甘える。その状態でアシュレイだけにみえるように、馬鹿にした顔で舌を出している。オレや使用人たちには見えてるんだけどな……意外と妹には意地悪なローラをみて笑いそうになる。でもさすがに妹ちゃんが可哀そうのなので手伝ってあげるか……。
「じゃあ、先生が手伝ってあげるからもう少しだし頑張ろう」
後ろから一緒に鉛筆を持って補助をしてあげる。出来上がると大喜びでパトリシアさまに見せに行くのをみてほっこりする。
「ねえ! お母さま見て~! お姉さまより綺麗に書けた~」
「なっ! ほとんどケイ先生が書いたんじゃない! 本当に馬鹿!」
「アシュ! 馬鹿じゃないもん! うあ~ん」
「ふん! またウソ泣き~」
「ウソ泣きじゃないもん! うあ~ん」
折角ほっこりしていたのに……なんだこの地獄は……?
♦ ♦ ♦ ♦
「それでは魔法の授業を始めていくのです。今日は魔力を感じる所から初めて、魔力の操作までが目標なのです。最終的には魔力が上手く使えなくても、魔導具に魔力を補充できる所まで出来たら問題ないのです」
ニャンニャンちゃんは簡単に言うけど、その補充も出来なかったらどうしよう……それも私だけ……。このままだと本当にただの足手まといになっちゃう。だってジュリアは誰とでも仲良くなれてもう四人の中心になってるし、マヤちゃんは魔法が使えてマルチナさんは戦闘が出来る。でも私は何も出来る事がない。ここで魔法も覚えられなかったら、みんなに見捨てられちゃうかも……。
「じゃあ、まずはジュリアとルーナなのです。あたちの手をつかんで目を閉じるのです」
黙って私はニャンニャンちゃんの左手を握り、ジュリアは右手を握る。そして緊張をほぐすために深呼吸をして目を閉じる。
「では、いくのです」
「熱っ! くはないけど、何か温かいのが体に入ってきた!」
ジュリアが急に大きな声を出したので驚いたけど、確かに握っていた手から温かい何かが流れ込んでくるのを感じる。これが魔力? 何か体に力が湧いてくるような気がする。
「今、体をめぐるように動いているそれが魔力なのです。それと同じものを自分の体の中で見つけて、肉球に集めてみるのです。じゃあ、あたちの手をはなすのです。次はマルチナとマヤなのです」
手をはなすとニャンニャンちゃんは他の二人の下へ行ってしまった。誰も何も言わなかったけど、多分、肉球は人間でいう所の手のひらだよね……? 目を閉じた状態で自分の体に意識を向けると、何やら胸の真ん中に一番強い力……魔力? を感じる。これをどうやって手のひらに? 更に集中すると、とても弱い魔力が体をめぐっているように感じる。気のせいかもしれないけど……。
「あい! それでは目を開けるのです。何となくでいいからわかったのです?」
「全然わかんない! 最初だけあったかい感じがしたけど、ニャンニャンから手をはなしたらわかんなくなっちゃった」
「私も同じ感じです」
マルチナさんはジュリアと同じで出来なかったみたい! その結果に自分だけじゃなかったと少しホッとする。
「私は一応、魔力を集めるところまでは出来ました」
「いいな~」「よかったね! マヤ!」
マヤちゃんはやっぱり出来たみたい。私も一緒になって褒めておく。
「すごいね! マヤちゃん! おめでとう」
「ありがとう! ルーナちゃん! でも一応、魔法適性があるから出来ないと逆にまずいのかも」
「あっ、あっ! ごめんね! 何か失礼だったかな?」
「……ち、違うの私はすごくないよって言いたかっただけなの! 変な言い方してごめんなさい!」
「二人とも何でそんな事で謝りあってんのよ!」
最後はジュリアが来てくれたおかげで、みんなで笑ってこの話は終わったけど、嫌な子って思われてないかな? 少し心配……。
「ルーナはどうだったのです?」
ニャンニャンちゃんにそう聞かれて、自分が感じた事を間違っているかもしれないけど正直に話してみる。
「え~と、気のせいかも知れないけど、ニャンニャンちゃんの魔力とは別の魔力を胸の真ん中の辺りで感じて、それと弱い魔力が体をめぐっている感じもしました」
「にゃ? すごいのです。魔力を持っている生き物は大抵、胸の辺りに魔力の源を持っているのです。それを感じ取れたなら魔力操作もきっとすぐ覚えられるのです」
それを聞いて、みんなの足でまといにならなくてすむかと思ったら、少しほっとした。でもまだ本当に出来た訳ではないから安心できないけど……。
「凄いじゃん! ルーナ! いいな~!」
「あはは! まだ本当に出来た訳じゃないけどね……。でもジュリアだってきっとすぐに出来るようになるよ」
「だと、いいんだけどね……。魔法が使えないのに本当に魔力の源が私にもあるのかな……?」
その疑問にはニャンニャンちゃんが答えてくれた。それによると人族はごく一部の例外を除いて、ほぼ全ての人が魔力を持っているらしい。でも驚いたのが人でもなんでも魔力の源を持っている生き物が天に召されると、その魔力の源が魔石になるみたい……。
「え~っ! その例外だったらどうしよう」
「四人は魔力を持っているのです。だから心配しなくて良いのです」
「「えっ!」」
ニャンニャンちゃんは使える魔法を見る事が出来るスキル? という魔法みたいな力を持っているみたいで、私たち全員に魔力がある事を当たり前のように教えてくれた。もう! ニャンニャンちゃん! 本当に魔法が使えるか凄く心配だったんだから、もっと早く教えてくれればよかったのに……でも、良かった。それなら頑張れば出来るようになるって事だよね……?
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