第110話 メイドの問題点
試着が終わった人から順に、アメリアさんに渡したメジャーで足のサイズを測ってもらい、オレがそのメイドさんの名前とサイズを記入していく。予想をしてはいたのだがここまでとは…………靴を脱いだメイドさんの足の臭いは、少し離れているオレにも臭ってくる程の強烈なものだった。原因としてはお風呂の習慣がないのが一番だとは思うが、靴を一足しか持っていないのも問題だろう。流石にもう一足を渡すのは直ぐには無理だから、インソールと靴下の替えを多めにしてサンダルも付けてあげる事にしよう。
「ケイさま、足の大きさは二十三です」
明らかに口のみで呼吸をしているアメリアさんが、伝えてきたサイズを用紙に記入する。
「二十三ですね! 服のサイズはどうでしたか?」
「あの~大きさは二が丁度良かったのですが胸が少し窮屈で、三だと胸は平気でしたが全体的に大きい感じだったのですが、どっちが良いでしょうか?」
「あ~なるほど! じゃあ、サイズは二にしましょう! 胸の部分は少しお直しすれば問題ないので……。カミラさんは彼女の胸のサイズを測ってきてもらえますか?」
「畏まりました」
「あっ!」
その声に振り返ったカミラさんに測る場所を教える。
「胸が一番膨らんでる所と、膨らみのすぐ下の周囲の長さの二ヵ所を測ればよろしいのですね」
「そうです。宜しくお願いします」
パーテーションに向かって行った二人を見ながら複雑な気持ちになる。あんなにスタイルが良くて美人なのに足は臭いのか……。
♦ ♦ ♦ ♦
その後も幼すぎてサイズが合わない者、背が高すぎて合わない者など全てのサイズに合わない者は出たものの、その度にサイズを測ったので問題とはならなかった。ほとんどのメイドの足が臭いのは問題だったが……。
「ケイさま! 何人かが月の病で、試着をするとメイド服を汚してしまうかもしれません。いかがいたしましょう?」
カミラさんが小走りで報告に来たので何かと思ったがそういう事か……。月の病って多分、生理だよね?
「あなたちもこちらに来て謝罪をしなさい! あなたちのせいで余計な時間を取らせてしまうのよ!」
カミラさんにそう言われメイドさんたちが集まり謝罪を始める。
「ちょっと待って下さい! みなさん! 謝る必要はないですよ。別に今日、都合が悪い人は後日でも別に構わないですし…………でも着ただけでそんなに汚れるものですかね? ちなみにですが、みなさんは何か対処はしていないんですか?」
「私は折りたたんだ布を使ってはいるのですが、それでは足りないので汚れて良いペチコートやドロワーズを履くようにしています」
なるほど、なるほど……。
「私は血液を使い切る為にしっかり働きました」
ん~っ! ちょっと意味が分からないので、とりあえずスルーで……。
「私は先輩に借りたヒキガエルを腰に下げています」
えっ? カエル? なんで? …………とりあえずスル―で。
「私は苔を……」
「えっ? …………こけ? …………岩とかに生えてる苔ですか?」
話を聞くと布の代わりに、その辺に生えてる苔を股の部分にあてて血を吸収させるのだという。またヒキガエルは焼いて粉にした物を袋に入れて腰から下げると、出血を止められるのだそうだ。これは迷信だけど信じるのは何となくわかる。でも苔は…………思いつくのも凄いが本当に実行している事に驚かされる。というか布ぐらい支給してやれよ。
「そういう布って、お給金で買えないぐらい高いんですかね?」
女性たちはお互いに視線を交わし、その中の一人が代表して答える。
「わ、私たちはまだ見習いなので……」
ん? どういう事だ? 見習いだと苔を使わなきゃいけないとか……そんな訳ないよね。
「見習いの者は衣食住を保証される代わりに、仕事をおぼえるまでの何年かは無給で働くのがこの国の通例となっているのです。ですので彼女たちは布を買う事は出来ないので、先輩や誰かから貰うしか手に入れる事は出来ないのです」
理解していないオレにカミラさんが補足の説明をしてくれる。
「……なるほど、大体わかりましたが、最後にもう一ついいですか? 血を使い切る為にしっかり働くとかっていうのは、どういうことなんでしょうか?」
どうやら働かない女性は、毎月使い切らなくてはいけない血液が余るので、その血液が生理によって排出されると信じられているようだ。それでしっかり働けば排出される血液が少なくなるという事らしい。
「ん~っ! 瀉血もそうですが間違った説が広く信じられているようですね! 生理は病気ではないですし、余った血液を排出しているわけでもないです。妊娠や出産の前提となる重要なものなのなんです。私もそれほど詳しくは説明できないですが、パトリシアさまに相談して了承が得られたら、希望する方に説明する場を作りましょう。女性の地位向上には必要不可欠な知識ですから……。カミラさんからもそれとなく伝えて貰ってもよろしいですか?」
「畏まりました。後ほど伝えておきます」
「よろしくお願いします。では試着の問題を解決しましょう。ちょっと待ってて下さいね」
オレはそう言って布の入った木箱を開ける。生理用品の事はよくわからないんだよな……ぎりナプキンが分かるぐらいだし……。でも多分、この人たち下着を履いてない可能性が高い……。紐パンみたいな感じで固定すればいいか! そう思い紐パン型のナプキンをその布で作れるだけ【ものづくり】で作り、あたかも最初から箱の中にあった様に取り出す。
「え~と、私の故郷で使われている生理用品がたまたまいくつかあったので、皆さんはこれを使って試着して下さい。もちろん、使用したものは差し上げますので今後も使って下さい。使い方わかりますかね?」
「これは……奥様も使っているクラウトに似ていますね。こちらの方が断然、質が良いですが……」
あら? これはこの世界にもあったのか……という事は使用権が登録されてるかもしれない。売るわけではないけど問題あるのかな? 明日、時間があったらギルドに確認しに行くか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます