第91話 副リーダー

 ある程度のオレの使えるスキルや魔法についてと、ニャンニャンがケットシーであることを四人に話した。それが他の人間に知られる事が如何に危険かについても話し、理解してくれたと思う。【秘密の部屋】については最後まで迷ったが御使い様から頂いた大事な物もあるので、もう少し様子を見てから教える事にした。




「それじゃ話は一旦ここまでにして、さっき倒したネズミの肉をみんなで焼いて食べてみよう」 




「あの~……」




「んっ? どうした? ルーナ!」




「あの、あの……毒ネズミの肉はうまく処理して食べないと、病気になるって……」




「え~と、ネズミの肉は全部、毒を抜いてオレの魔法で処理してあるから大丈夫なんだけど……そりゃあ、まあ、心配だよね……ん~っ! オレが先に……いや、無理に食べる事はないか。……他の何かを持ってくるよ! みんなは石を積んでかまどの用意をしておいてくれる? ニャンニャン! ちょっと行ってくるから、四人の事はお願いね!」




「任せて欲しいのです」




 病気になると教えられていた肉を、いきなり平気だから食べようと言われてもオレでも手が出ない。しかもそう言っているのが会ったばかりの相手なのだから……。とりあえず、四人をニャンニャンに任せて【秘密の部屋】を出す為に少し離れた場所へと向かった。










 ♦ ♦ ♦ ♦










『ニャンニャン! 今部屋から出たんだけど、荷物が多すぎるから手伝ってくれる』




『あい! 今すぐ行くのです!』




 しばらくして、足元からニャンニャンがあらわれる。




「ありがとう! この荷物なんだけど、お願い!」




「了解なのです!」




 荷物が次々に影に収納されていく。 




「うわ~! やっぱり便利だな~!」




「あっ! ケイさま! ネズミの素材も全部、収納しておいたのです」




「おお~! さすが、ニャンニャン! 気が利くし可愛いし、言うことなしだね」




「そ、そんなことないのです……」




 モジモジしてるニャンニャンを抱っこしてみんなの下に向かうと、かまどから既に煙が上がっていた。




「えっ! 凄い! もう火が付いてるじゃん」




「あたちがマヤに発火を教えてあげたのです」




「え~~~~っ! ホントに? ちゃんと教えたり、みんなを守ったり凄いじゃん!」




「えへへなのです……」




 ニャンニャンは人間が嫌いじゃないみたいだし、頼りになるからこの子たちの指導をお願いしてもいいかもな……。普段はオレが家庭教師してる間に読み書きや計算の勉強を見てもらったり、一緒に依頼とかを受けてもらえばニャンニャンも待っている間、寂しくないから良いかもしれない。




「ケイ! 聞いて~! この火、マヤが付けたんだよ~!」




 オレに気付いたジュリアが駆け寄ってくる。




「聞いた聞いた! 凄いじゃん! みんなもかまどの用意ありがとう! 早速、食べよう! その前にみんな並んで~!」




 みんなを一列にならべて浄化をかける。


 


「うわっ!」「きゃっ!」




「みんなも知っているかもだけど、汚い手で食べるとお腹を壊すし病気にもなりやすくなるから、今は神聖魔法で綺麗にしたけど、オレがいない時は綺麗な水で手を洗うようにね」




「そんなの無理だよ! 綺麗な水が手に入らないもん!」




 ジュリアにそう言われ、この世界では綺麗な水の入手がとても困難だった事を思い出す。




「……そうか……そうだよね……まあ、出来るだけ綺麗にしてから食べてね! それについては出来るだけ早く何とかするよ」




 多分、作れると思うんだけど、浄化か水の魔法を付与した指輪か腕輪を作ればいいよね! どっちがいいかな……?




「で、でも凄いね! 神聖魔法とかって神父さまの中の偉い人しか使えないと思ってた……」




「だからケイさまは特別なのです!」




 何故かニャンニャンが得意げに答える。


 


「あはは、手も綺麗になったし早速、食べよう!」




 ニャンニャンに荷物を出して貰い全員に食器とコップを配り、バーベキュ―用の長方形の鉄板をみんなが用意してくれたかまどにセットする。そして、隠す必要が無くなったので【ものづくり】でテーブルをいくつか作り、持ってきた食材、スープの入った鍋、パン、水や果実水の入った水差しを載せていく。




「凄~い! 美味しそう!」「わ~っ! 美味しそう!」




 嬉しそうな女の子たちにほっこりする。




「よ~し、肉をどんどん載せていくからどんどん食べよう! はいはい! 早く取り皿とスプーンをもって!」




 みんな遠慮がちだが嬉しそうに鉄板の周りに集まる。みんなの準備が整ったので、熱くなった鉄板にまずは塩と胡椒のシンプルな味の肉を載せていく。ジュ―っと肉が焼ける音が鳴り、焼けた肉の良い香りが漂い始め、誰かの喉がゴクリとなるのが聞こえた。




「はい、その肉もういいよ! 食べて! あっ! その肉も、もう大丈夫!」




 オレがそう言っても誰も手を出さず、お互いに譲り合っている。




「ほら~! 皿出して~! ホイホイ! ホイホイ!」




 焼けた肉を片っ端からみんなの皿に載せる。




「はい! ニャンニャンもいっぱい食べてね!」




「ありがとうなのです」




 苦しい時に人は本性をあらわすというが、それが本当ならこの子たちはもはや天使だろう。今まで食事にも困っていたはずなのに我先にと争うこともなく、この子たちは逆に他の子に譲る気持ちを持っているのだから驚きである。でも悪い奴に簡単に騙されそうでそこが心配ではあるが……。




「そうだ! ごめんごめん! 飲み物とスープもあったんだ! え~と! オレは肉を焼いてるから、みんなはそっちから順番にスープと飲み物を取りにいって! お椀とコップ渡したでしょ? あとパンもあるから欲しい人は取っていって!」


 


「このコップ、何か面白い形だね」




「うん、可愛いね! でも初めて見たね!」




「そのコップはククサっていって木のコブを彫って作るんだよ! あと、間違えないように名前も彫ってあるから、読めない人は今度、教えるからおぼえていこうね」




 実際は【ものづくり】で作ったのだが……。




「えっ! 字を教えて貰えるんですか?」




 興味があるのかマヤが質問してくる。




「そうだね! 習いたければだけど……」 




「習いたいです」




「私も~!」「私も習いたいです」「習いたいです」




「じゃあ、オレも教えるけど、オレがいない時は副リーダーに教わってね!」




「「副リーダー?」」




「決まってるじゃん! ニャンニャンだよ! ニャンニャン! お願いできるかな?」




「えっ! あたち?」


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