第86話 追跡者
冒険者ギルドに戻り太陽草の依頼を受け、街の近くの森に向かう。その際にパーティーで依頼を受けると、全員に均等にランクアップの為の評価ポイントが入ると言われ、即席パーティーを組むことになった。実際、今日だけだしパーティー名は何でも良かったのだが、女の子二人に任されてしまい悩んだ挙句、御使い様からイメージを貰って『
「白い狐って意味なんだよね? 動物の中で狐が好きなの?」
「そ、そうだね! 好きだね」
好きというかお世話になっているが正しいが……。
「ネコが好きなんだと思ってた」
そう言ってジュリアはニャンニャンに目線を向ける。
「ん~っ、ネコは普通かな! ニャンニャンは大好きだけど」
「へ~そうなんだ」
前をすまして歩くニャンニャンの尻尾が心なしか、いつもよりピーンと立っているようにみえた。
♦ ♦ ♦ ♦
森に入ると資源探索のユニークスキルをもっているニャンニャンに、太陽草の群生地まで案内してもらう。オレも探索魔法で出来ない事はないのだが、資源に関してはニャンニャンの方が探索範囲が広いのでお願いする事にした。そのおかげでオレは索敵の方に集中して探索魔法を使えたので、かなりの広範囲を警戒することが出来た。
「みんなちょっと集まって! ニャンニャンも……」
立ち止まり、みんなに集まって貰い尾行されている事を小声で伝える。探索魔法で確認すると、相手もこちらと一定の距離を保ち立ち止まっている。
「えっ? どうするの? 人間だよね?」
「多分、二人組の冒険者だと思う。まあ、二人ぐらいならオレとニャンニャンがいるから、どうにでもなるけどね」
「このネコって強いんだ」
「ジュリアたちよりは確実に強いよ」
「「えっ!」」
その事実を聞かされ二人は驚いているのだが、本気で勝てるとでも思っていたのだろうか? 二人なら本物のネコにも負けると思うのだが……。
「そんな事より……あのつけてきてる奴らをどうするか……」
「私は戦う……」「…………」
ルーナは黙っているが、ジュリアはそう言って近くの石を拾った。剣を渡してあるのだが石で戦う気なのか……?
「いやいや、相手の目的がまだ分からないし、いきなり戦うのはないかな……」
「なんでよ! 襲われてからじゃ遅いじゃない! それに今日上手く逃げられてもケイがいない日にまた襲われたら……」
意外にもジュリアが好戦的で驚かされたが、命の価値が軽いこの世界で自分の身を守るためには普通なのかもしれない。オレとしては面倒を避ける為に追跡を上手く撒こうぐらいに考えていたのだが、この子たちにとっては今日だけしのげば良いという問題ではないという事か……。
「分った。相手の目的次第では戦おう。でもなんで石?」
話を聞くと昔から人同士の争いで血を流してはいけないと、教会で教えられていたかららしい。そんな教えは人同士で争うような奴らは誰も守っていないし、石でも血は出ると思うのだが……。殴打系の武器ならいいって事なのか? 聖職者がメイスとかの鈍器を使ってるイメージなのは、そういう事だったのかもしれない。二人に剣を渡してもらい、ユニークスキルの【ものづくり】で剣を先が球になっているメイスに作り替える。
「これなら平気?」
「えっ? えっ?」
出来たメイスを渡すと、二人は口をパクパクさせて固まってしまう。
「ま、魔法ですか?」
「ん~っ、まあ、似たようなものだけど、正確にはユニークスキルかな……? スキルは知ってる?」
二人はスキルについては何も知らなかったようだが、魔法のような力を使えるという事で理解してくれた。
「あっ! 出来ればこの能力については、秘密にしてくれるとありがたいんだけど……」
「大丈夫です。私は絶対に誰にも言いません」
「また、ルーナはいい子ぶって! 私も言わないよ」
「二人ともありがとう! さて準備は出来たけど、ついて来ている冒険者をどうするかな……」
『あたちが様子を見てくるです?』
『えっ! 危ないよ~』
『影から出なければ平気なのです』
『う~ん! じゃあ、様子だけ見て来て貰おうかな……。でも少しでも危なかったら絶対に逃げるんだよ』
『分かったのです』
影移動を使いニャンニャンが、ズブズブと地面に沈んでいく。それを見た二人の大きな悲鳴が森にこだました。
♦ ♦ ♦ ♦
木の陰で先にいるケイ様たちの様子を伺っている人族の多分、メスたちを見つける。装備は最初にあった時のジュリアとルーナと変わらない感じで、一人が木の棒でもう一人は何か袋のようなものを持っている。もう少し近づいて何を話しているか聞いてみるのです。
「マヤ、どうしたの?」
「さっきから、同じ場所から動かなくなったの……」
「もしかしたら、悲鳴のような声が聞こえたから魔物と戦っているのかも」
「魔物の反応はないから、それは違うと思う」
「じゃあ、太陽草をみつけたのかも」
「そうかも……でもやっぱりマルチナは頭がいいね。太陽草の依頼を受けた人の後について行けば、自分で探さなくても見付けられるもんね」
「マヤが魔法であの三人を見失わないおかげだよ」
そう言って人族の二人は笑い合っていた。もしかしたらあの人族たちは姉妹か、お友達なのかもしれない。そんな事を考えながらユニークスキルの看破で、二人の使える魔法を確認してみると、どうやら一人は風魔法の探索を使えるようだ。でも、ケイ様の脅威になる相手ではないし話を聞いた感じでは、おこぼれを狙うような弱い存在のようだ。早速、あたちが分かった事を報告しに、ケイ様の所に戻ろうとした瞬間、ケイ様から念話が入る。
『ニャンニャン! 今、こっちに魔物の群れが向かって来てる。急いで合流しよう』
『分かったのです。あっ、でも、後をつけてた二人は弱っちいのです。多分、魔物一匹にも耐えられないのです』
『えっ! そうなの? じゃあ、オレたちがそっちに行くから、どうにかそれまで守ってあげて』
『分かったのです』
魔物の群れから弱い者を守る。それは凄く怖いけどケイ様となら出来る気がする。あたちは深呼吸をしてから、つけてきていた二人に念話で話しかけたのです。
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