第38話 変身魔法

 名前からして変身魔法に使う杖だろうか? それを取りに行ったゴブリンから、その杖が見つからないと報告があった。




「ケイ様、申し訳ありません。一度洞窟に戻ってもよろしいですか?」




「うん、大事な物なんでしょ? 急いで行って! オレは帰――」




「――ありがとうございます。こちらになります」




 帰ろうと思ったんだけど……案内してくれるらしい。どんな所に住んでいるか興味があるし、まあいいか。ミドリンの後について行くと、オークが十分通れるくらいの洞窟が見えて来た。




「結構、大きな洞窟だよね! 自分たちで掘ったの?」




「いえ、天然の洞窟を利用した為、入口や通路が広すぎて大きな魔物も入り込んでしまうのです。それでオークにも……」




「なるほどね~! みんなが杖を探してる間に良かったら入口を直そうか?」




「そんなことが可能なのですか?」




「うん、簡単にできるよ! また襲われても困るだろうし」




 みんなには探すのを優先させて入口をのんびり作る事にする。余り豪華にすると近くに来た人間や魔物に見つかる可能性があるし、入口を小さくして頑丈な扉を付ければいいか。土魔法を使って粘土遊びのように入口を小さくしていき、派手になりすぎないように気を付けながら作っていく。








 ♦ ♦ ♦ ♦








「ふ~~~っ! 完成! これぐらいなら派手じゃないよね?」


 


 出来上がった扉を少し離れた所から眺める。う~ん……少し植物を植えて隠した方がいいかも。色々手直しをしているとそこにミドリンが現れる。




「これほど強固な扉を短時間で作っていただけるとは……」




「――困ったときはお互い様でしょ! 困ったときはよろしくね!」




「ハッ! この命にかえましても……」




「命は懸けなくていいです……ところで、杖はあったの?」


 


「ありませんでした。オークが現れる前には確かにあったのですが……」  




「オークが関係してるのかな? オークには仲間はいなかったんだよね?」


 


 仲間はいなかったが、宝が置いてある部屋をオークに占領されてしまっていたので、何らかの形でオークが関わっているのは間違いないようだ。




「その杖が無いと変身魔法は覚えるのは難しいの?」




 ミドリンの話では、杖を使うと変身魔法を覚えていなくても魔力を使い変身できるそうで、稀に使用することで変身魔法を習得する者がいるらしい。たしか適性が無いと魔法は使えないって聞いたような……多分、変身魔法の適性がある人の習得のきっかけになるのかな? 全ての魔法に適性のあるオレが使えば習得できたかもな。




「それで何か手掛かりはあったの?」




「オークの支配下に置かれていた影響で記憶が定かではないのですが、レッドキャップを見た者が何名かおりました」




「レッドキャップ? 何か聞いた事あるかも」




「種族的には我々と同じゴブリンなのですが、とても残虐で危険な存在です」




 獲物の血で染めた帽子が名前の由来で、長く苦しめる為の拷問の術に長けていて人間にも危害を加えるらしい。人間から見たらレッドキャップも普通のゴブリンも区別がつかないので、教会が排除対象にしてもあながち間違いでもないのかもしれない。まあ、教会が排除対象にした理由とは違うのだが……。




「あっ! 赤いバンダナってマズくない? みんなレッドキャップに間違えられちゃう」




「現在は人間との交流はありませんし、魔物に対する抑止力になるので付けている恩恵の方が大きいと思われます」 




「そ、そうなんだ……」




 抑止力になるぐらい有名なんだから、レッドキャップは強い部類の魔物、いや、妖精なんだろう。ミドリンに聞いてみると、オークも問題にならないくらい強いらしい。ゴブリンの上位種的な感じ? 




「もしかして、オークの裏でレッドキャップが糸を引いていたとか……?」




 しかし、それだけ強いならレッドキャップがわざわざオークを使うまでもない気もするし、杖だけが目的だったのだろうか? う~ん、わからん。横を見るとミドリンも腕を組んで首を傾げていた。




「ケイ様、無くなってしまった物は仕方がありません! 杖がないので感覚が掴みづらいかと思いますが、変身魔法を試してみますか?」




「えっ! 杖探しはいいの?」




「このままでは、ケイ様に何もお返しできませんし……それにレッドキャップが犯人の場合は、私たちではどうする事もできません」




「お返しとかは別にいいんだけどね……あっ! いい事思いついた! やっぱり変身魔法を教えてくれる?」




「もちろんでございます」








 ♦ ♦ ♦ ♦








「体の外側に魔力を巡らせて、変身したい物の色、大きさ、肌触りを想像して下さい」




 ミドリンの言葉にしたがい魔力を操作する。肌触り? 




「えっ! ちょっと待って肌触り? 一回触らせて」




 ミドリンの頬や耳をベタベタと触る。色が違うだけで人間と変わらない感じだね! フムフム。何かミドリンが真っ赤になっている気がするが、気にせずベタベタ触る。




「よし、わかった! ありがとう! へんし~~ん!」




 体が光に包まれ体が縮んでいく。手を見ると緑色になっているので成功だろうか? 見てみたいのに鏡がない。さっき作っておけばよかった。




「どう? ミドリンに変身してみたんだけど?」




 ミドリンの方に向くと、鯉のように口をパクパクしている。




「ケ、ケイ様は、本当に人間なのですか? 半刻も経っていないのに、もう使えるようになるとは……」


 


「今はゴブリンだけどね! 成功っていう事でいいのかな? 見てみたいな! 鏡ってない?」




 ゴブリンたちは、醜い自分の顔を見たくないので鏡は持たないそうだ。ステータスを見てみると変身魔法が追加されていたので、どうやら本当に覚えることが出来たらしい。




「作ってきたい物があるから、ちょっと待ってて」




 そう言うと見えないところまで走っていき【秘密の部屋】を出す。体が自分のものじゃないみたいで変な感じだ。部屋に入ると先ほど貰った材料で手鏡を作り、自分の顔を見てみる。




「おお! ミドリンだ! よく考えたら凄い便利な魔法かも! え~と……確か解除するには、体を包む魔力の流れを一度止めるんだったな」




 ミドリンの言っていた通りにして元の体に戻り、もう一度、鏡を覗いてみると、そこには中学時代の自分の顔があった。



 ♦ ♦ ♦ ♦



名前:ケイ 

種族:人間 

年齢:14歳


 LV:7

 HP 170/170

 MP 290/330 +10

 STR   37

 VIT   48

 INT   108 +2

 DEX   40

 AGI   33

 RES   64 +2

 LUK   50 +1


≪ユニークスキル≫


 【秘密の部屋】

 【魔法全適性】 

 【ものづくり】


≪スキル≫


 【料理Lv10】

 【言語理解Lv10】

 【神聖魔法Lv10】

 【水魔法Lv1】

 【火魔法Lv1】

 【風魔法Lv1】

 【土魔法Lv1】

 【光魔法Lv1】

 【変身魔法Lv1】NEW

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