第9話 村人大集合

 教会前の広場にはゾクゾクと村人が集まり始めていた。その度に神父さまが紹介してくれて、肉を売りたいことを伝えてくれた。値段を伝えるとそれと同等の物か、お金を持ってる者はお金を持ってきてくれるらしい。




「それじゃあ! 鹿の肉は一キロで銀貨二枚で、狼の肉は一キロで銀貨一枚でお願いします。干し肉は一枚で大銅貨五枚で、焼いた串は大銅貨一枚でどうでしょう?」




「魔術師さまは何とだったら交換してくれるんだい?」




「変なものでなければ何でもいいですよ!」




 村人の問いに答えると笑いが起き、『急いで取りに行ってくる』とみんなが我先にと走って行った。


 


 一番手は若い男性で大き目の袋を担いで持ってきた。その袋を鑑定してみると、中身は小麦粉十キロだった。一キロで二千五百円なので二万五千円分? 小麦粉の値段高くないか? お金が流通してないって聞いて、勝手に貧乏だと思ってたけどそう言う訳でもないらしい。 




「これは近所の連中と一緒に買う分で、俺はそれとは別で串を二本もらえるかい?」




 男性はそう言うと袋をおろし、大銅貨二枚を出してきた。やった! 現金収入きた~! 硬貨をもらい、串を二本渡して尋ねる。




「ありがとうございます。 小麦粉は何と交――」




「――うめ~! ハフハフ! おい! みんなこれうまいぞ!」 




 全然話聞かね~! 男性は興奮して周りにおすすめし始めた。いや、ありがたいけどね。




「俺も~」「俺も二本!」「あたしは、四本!」




 ええ~! 足りなくなりそうだな! 代金をもらい、持ち帰りたい人には木の布で包んで革ひもでしばって渡す。食べた人たちは口々に周りにおすすめしだした。




「だから言っただろう!」




 最初の男性が、なぜか誇らしげに腕を組んで頷いていた。大分、場が落ち着いて来たので、もう一度さっきの質問をする。




「最初のお兄さん! 小麦粉は何と交換しますか?」




「ああ! そこに置いてある鹿の干し肉全部と鹿肉を交換できるだけ」




 周りからブーイングが起こる。




「そこの干し肉で串焼きを作ってるって言ってただろう! なくなっちまうじゃないか!」




「「「「そうだ! そうだ!」」」」




「いや、だって早いもん勝ちだろ!」




 ブーイングが強まり見かねて声をかける。




「みなさん! 落ち着いて下さい。部屋にまだあるので大丈夫ですよ!」




 そう言って男性に干し肉と、切り分けた鹿肉を布に包んで渡す。




「ありがとうございました。じゃあ! ちょっと干し肉を取ってきますね! ちなみに干し肉買いたい人って、どのぐらいいます?」




 結構な人が手を挙げたのを見て、急いで部屋に戻り【秘密の部屋】に入る。干し肉の方が売れそうだな! そう思い残りの塩漬けの鹿肉を全部、干し肉にして屋台の場所に戻る。




 その後もひっきりなしに、村人が来てくれて結局用意した肉は完売した。明日また売ると伝えてこの日は終了となった。




「ありがとうございました。おかげさまで盛況でした」




 神父さまたちと喋っていると、子供たちも親と一緒に帰って行った。




「魔女さま~さよなら~!」




 それに、手を振り返す。




「凄い量ですな! 部屋まで運ぶのを手伝いますよ」




 流石に一人じゃ大変なので、神父さまの申し出に甘える事にする。シスターも手伝ってくれるようだ。




 屋台――テーブルと焼き台だけだが――は明日も使うので置いておく許可をもらった。焼き台の蓋を作り、蓋をして火の始末をする。それが終わると急いで荷物運びに加わる。






  ♦ ♦ ♦ ♦






 しばらくして、やっと運び終わり二人にお礼を言う。




「ありがとうございました。助かりました」




「いえいえ! こちらこそ、こんなに頂いてしまって」




 お酒は好きじゃないのでワインとエールを二樽ずつ、後は適当に少しずつ教会に寄付しておいた。それでもかなりの収穫だった。




「こちらこそ、助けて頂いたお礼も込めてほんの気持ちです」




「ケイ様! もうすぐ夕食の時間ですがご一緒にいかがでしょうか?」




 確か教会は食事中は喋らないんじゃなかったか? 気まずいし遠慮しておくか。




「今日はすこし疲れが出たので、早めに就寝させて頂きます。申し訳ございませんが、遠慮させて頂きます」




 そう伝えると部屋に戻らせてもらった。二人はよくある事なのか、あっさり了承してくれた。まあ、嫌とは言えないか。 




 部屋に戻ると、荷物を【秘密の部屋】に突っ込んでいく。これだけの荷物が突然消えたらビックリされると思うが、最悪は魔法の一点張りでごまかせばいいや。それにしても、結構村の人も硬貨持ってたじゃん。大銅貨ばっかり使ってきたけど……。結局は銀貨四枚と大銅貨五十九枚だから神父さまに、買ってもらった分も含めると日本円で約二万円くらいか。




 物々交換は、小麦粉をはじめ、野菜、果物、一番欲しかった大豆とオリーブが手に入ったのは大きい。明日は村の人たちに頼んでおいた物が届けば、かなり嬉しいんだけどな。明日の仕込みをしようとした時、ドアがノックする音が聞こえたので急いで【秘密の部屋】を消し、返事をする。




 すると、シスターの声が聞こえてきた。




「お休みの所すみません! どうしてもケイ様にお会いしたいとの事なのですが、どういたしましょう?」




 え? 誰が?



♦ ♦ ♦ ♦



〇お金


銅貨  10円

大銅貨 100円

銀貨  1000円

大銀貨 10000円

金貨  100000円

大金貨 1000000円

白金貨 10000000円

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