第2話 土魔法とユニークスキル
鑑定でより詳しく調べられる事が分かったが条件もあるらしい。基本的には生き物は自分より魔力が低い相手しか鑑定できず、自分より魔力が高い相手を鑑定すると一部しか見えず、差が大きいと全く見えないそうだ。試しに御使い様を鑑定させてもらうと全くみえなかった。
詳しく鑑定をしたことで、ファイアボールなど使える魔法が分かったので御使い様にみてもらいながら練習をした。だが操作や発現もかなり奥が深い。火をつける。水を出す。風で涼む。光で照らす。土や石で造形する。など生活にとても役立つ。
その中でも土魔法は一番気に入った。楽しくてリアル御使い様を石で作った所、喜んでもらえた。欲しそうだったのであげたら謎空間に消えていった。像を作ってて思ったんだけど、御使い様ってフェネックだよね。耳が大きいし。日本にいないはずだけど神様の眷属は関係ないのかな?
しばらく魔法を練習した後、ユニークスキルの【ものづくり】に挑戦する。やはりユニークスキルなので魔力を使わないそうだ。今度は落ちていた枝で御使い様の像を作ってみる。枝が溶ける感じで混ざり合い球体になった後、像の形に変化して完成する。土魔法より全然早い。目の前に掲げてよく見る。イメージが弱かったのか顔の部分の造形がやや拙い。修正しようとしても一度球体になるので修正というよりは、作り直しというのが正しいだろう。
何回か作り直しうまく作れたが、イメージするのが意外と難しい。
「結構練習が、いりそうですね」
「うむ、慣れるまでは土魔法で見本を作ったり、設計図などでイメージの手助けをすると失敗が減るじゃろう」
――なるほど、何も見ないでぱぱっと作れるのは一部の天才だけだしな。よし何か作ってみよう!
早速、土魔法で見本の石のナイフを作る。折角なので凝ったものを作りたいと思い、刃の側面に模様をいれる加工をして刃の強度も上げる。なんとなくスケルトンが柄の部分に抱きついてるようなデザインに加工してみる。何これカッコいい。どうやら感性が年齢に引っ張られているようだ。いや、元々か……。御使い様が残念なものを見る目でこちらを見ている気がするが、気にしないでおく。
次はユニークスキルの【ものづくり】を使ってナイフを作ってみる。土魔法で作ったナイフをお手本に、全く同じデザインで柄の部分だけ木のナイフをイメージしてみる。枝と石が溶ける感じで混ざり合い球体になった後、ナイフの形に変化して完成する。うまくいった。その後も二本同時作成にも挑戦してみたがこれも大成功だった。
「御使い様~! うまくいきました!」
「うむ、では鑑定してみるがよい」
言われた通りに四つのナイフを鑑定してみる。まず土魔法で作った方はレア度がコモンで、武器としての現在の相場価格が大銀貨一枚で、【ものづくり】で作った方の三本はどれもレア度がアンコモンで、武器としての現在の相場価格が大銀貨五枚だった。ここで注目すべき点が、【ものづくり】の方が高品質だということと、四つのナイフがすべて美術品としての相場価格が時価となっていた事だ。
「土魔法は造形はできるが品質を上げる精錬などは難しいので、武器のレア度を上げるには適してないのじゃ! その点【ものづくり】はイメージだけできれば、精錬されたものが作れてしまう。材料により限度があるが、品質は土魔法の比ではないだろう」
――土魔法は側だけで、【ものづくり】は中身も作れる感じだろうか? イメージできればだけど……。
「では、一通り覚えたことじゃし、そろそろ行くとするかのう」
何事かと尋ねると、この地は二つの異世界の狭間で普通の人間は入れず、一度迷い込むと二度と出れない領域らしい。神域的な場所って事か? その為、外に出れるように案内にしてくれるらしい。
「こっちじゃ!」
御使い様が歩き出したので、急いで体のわりに大きい尻尾を追いかける。一緒に歩きながら新しい世界の話を聞かせてくれた。
それで分かった事はこの世界は元の世界より文明が遅れていて、科学の代わりに魔法が発達した世界らしい。その為、呪いも発達しているので、決して元の世界の名前は教えないようにとの事だった。宗教の影響も大きく、聖地や聖遺物をめぐる戦争や単純に侵略による戦争がまだ度々起こっているらしい。種族も様々で人間以外もいるそうだ。――何それ! 色々と怖い。
戦争は嫌だな……。与えてもらった力で商売でもして楽しく過ごしたいものだ。
「戦争に行きたくないなら、帝国が比較的安全だろう。軍隊もあるし市民が駆り出されることは少ないのじゃ」
戦争に行く可能性は少ないだけで何処もゼロではないのか……。
「力を使い商売をしても良いし、レベルや色々なスキルレベルを上げるのも良いじゃろう。お主の人生じゃしたいようにするがよい」
「そういえば何でレベルが七なんでしょうか?」
聞いてみると元の年齢から今の年齢を引いた分がレベルになったらしい。――そうなんですか、としか言えない答えだった。
「あそこが出口じゃ!」
少し先の木の大きなうろを小さな前足で指し示す。
まだ聞いていないことがありそうだが今は思いつかない。
「色々教えて頂きありがとうございました。理解が色々追いつきませんが、何とか頑張ってみます」
「お主は昼間に来た時に、大量のいなりをお供えしてくれたし特別じゃ! 気にするな!」
まさか祟りを恐れての行動が我が身を助けるとは、過去の自分を褒めておこう。
「ある程度スキルの使い方も覚えられたし、元の世界には帰れないが何とかなるじゃろう!」
……あれっ! なんかとんでもない事をサラッと言われた気がする。
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