第23話 ソファーで寝る好きな人
……けど、チラチラとこっちを見てくる。
どうせ、私が声を掛けたら「やっぱ、俺も手伝うよ」とか言ってくるんでしょ?
そう先を見越した私だけど、このまま無視し続けても可哀想だと思い、手伝わなくていいという言葉も混ぜて声をかける。
「ゆっくりしてていいよ。翔はテレビでも見てて」
「いや俺も手伝うよ」
「私がやりたくてやってるの。だから大丈夫」
「……そうか。ありがとう」
私の言葉に、何か物申したいことがあったのかわからないけど、翔は少し目を細めてテレビの方に体を向きなおした。
翔も、こういう時は「俺がやりたくてやってることだ」って言うんでしょ?知ってるよ。
中学の時にも言われたんだから。
私も、昔の苦い思い出を思い出しながら、翔から視線を逸らし、洗い物に集中する。
フライパンは先に洗ったとはいえ、ボウルやザルはまだ洗えていないから、もう少しだけ時間がかかりそうだ。
「よーし。終わった終わった」
水道の水を止め、吊るされているタオルで手を拭き、私は翔の様子を伺う。
翔はいつの間にかソファーに横になっており、テレビは付きっぱなしで、寝ているか寝ていないのか判断ができない。
けど、なんとなくわかる。
「疲れちゃったんだね」
キッチンに一言だけ残し、私はソファーの前へと移動する。
そこにはやっぱり、気持ちよさそうに眠っている翔の姿があった。
「ここで寝ると、風邪引いちゃうよー?」
テレビを消しながらそう言い、翔が眠るソファーの前に屈みこむ。
中学の頃では見れなかった、翔の寝顔。
つい写真を撮ってしまいそうなぐらい、可愛い寝顔。
「テレビまでつけちゃって、相当疲れてたの?」
なんて言葉をかけても、寝ている人からは何も言葉が返ってこない。
昨日は私が眠ってた場所に、翔が寝ているというのは、少し……いいかも?
って違う!何考えてるの私!
このまま寝てると、翔が風邪引いちゃうかもしれないじゃない!
「翔ー?服についた匂いも落とさなくちゃいけないから、お風呂にも入らないとダメだよー?」
何とか翔のことを起こそうと、体に染みついた匂いを気にしろ作戦で挑むけど、翔の寝息が収まることはなく、なんなら逆の方向に体を向けてしまう。
「ふーん?この私を邪魔者として見てるんだね?叩き起こしちゃうよ?」
脅しの言葉も込めて、翔に話しかけるが、やっぱり起きてはいないようで、返事は返ってこない。
このまま叩き起こしてもいいけど、流石に可哀想だし……どうしよ。
うーん、と唸り声を上げて考える私は、もう一度翔の顔を見るために、ソファーの後ろ側に立ち、背もたれから見下ろしながら、寝顔を見る。
やっぱり、可愛い。
その一言が頭に思い浮かび、私は翔を見下ろしながら口を開く。
「……起きる前に、ちょっとぐらい触っても、いいよね?」
一応翔に問いかけるように言ったのだけど、言葉が返ってくることはなく、私はそれを了承したとみて、人差し指を翔のほっぺたへと持って行く。
「おぉ。男の子でも、こんなにぷにぷにしてるんだ」
思わず歓喜の声が上がってしまう。
ぷにっという効果音が鳴ってしまうのではないか?と思ってしまうほどに翔のほっぺたは柔らかく、その辺の女子も顔負けなぐらい柔らかい。とにかく柔らかいのだ。
……もう一度触りたい。もう少しだけ、堪能したい……!
そんな邪な思考が私の脳裏に過るけど、もう一回触って、起きてしまったらなんと言い訳したらいいか分からない!
……けど!欲望には逆らえないよね……!!
――ぷにっ。ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに。
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