第8話 我が家へようこそ

 そんな調子で、家まで歩く俺と日彩。

 スーパーから俺の家まではほんの数分。だからあまり、荷物持ちに抵抗はなかった。


 まぁそれでも、退院明けのやつに持たせるというのはどうかと思うが。


「ようこそ。我が家の前へ」

「何回も来てるでしょ」

「それもそうか」


 余談にもならない余談を玄関の前でし、俺は鍵を開ける。

 そして、暗かった玄関に電気を灯し、右腕を大きくあげる。


「じゃ、改めて。我が家へようこそ」

「お邪魔します」

「どぞー、ゆっくりしていってねー」

「初めてだから、ゆっくりできないかも……」


 あーそういえば、初めてか。

 少し案内でもしようかな?


 そう思い、靴を脱いでスリッパを2つ、俺のと妹のを並べる。


「んじゃ、こっちの茶色の方履いてね」

「ありがと」

「おぉ……素直にお礼なんて言えるんだな」

「……舐めてる?」

「割とね」

「あっそう……」


 俺の言葉にご立腹の日彩は睨みを効かせながら、茶色のスリッパを履く。

 そんな日彩の睨みなど、気にも止めない俺も、紺色のスリッパに履き替え、廊下を進む。

 とりあえず、買ったものは冷蔵庫に入れておこう。


 大雑把に道案内をすると、1階にはリビングと洗面所や風呂場、そして母さんと義父の部屋がある。

 俺の部屋と妹の部屋はなんと2階にある。

 父さんと母さんがかなり稼いでいたらしく、二階建ての一軒家を一括で払ったとか何とか。


 その家をこれからは俺1人が管理する。

 うん、うーん……節約……だな。


 ある程度の案内が終わると、日彩の張り切りが更に増した気がする。

 これから晩御飯を作る、ということを考えてるのだろうか?

 リラックスすればいいのに。


「こんな感じだけど、わかったか?」

「ある程度はね。それじゃあ、台所借りるよ」

「あいよー」


 2階にいた俺たちはリビングへと向かい、リビング横にある台所の前に立つ。

 そして、引き出しの中にある菜箸の場所や、フライ返しの場所、塩の場所や胡椒の場所を教える。


 こういうのもしっかり教えとかないと、後から場所どこ!って怒られそうだからな。


「んじゃ料理頼んだ。俺はバイトの連絡とか諸々してくる」

「ありがとね」

「日彩にお礼言われるの、慣れないな……」

「なんでよ」

「これまで言われてこなかったからだね」

「それは、そうかも……」


 認めたなこいつ。

 まぁ認めたからってどうこうする訳では無いから、なんでもいい。

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