第2話 事件
夏休み、冷房が効き、涼しい車内から出たくないと思うほどに心地いい。
一眠りついていた俺はゆっくりと瞼を開き、前席で会話をする母さんと妹に目をやった。
「宿題やっていい?」
「酔わないならいいけど」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
酔いやすい体質が何を言ってるんだ?なんてツッコミは口の中だけに閉じ込めて、まだ重たい瞼で窓の外を見やる。
右の窓には海が見え、左の窓からはガソリンスタンドやスーパーが立ち並んでいる。どうやらまだ着きそうにないみたいだ。
まだ寝れるかなんて思いながらチラッと母さんの横顔を覗き見て、俺は自然と安堵した。
というのも一昨日、義父が捕まったからだ。その時、俺は東京旅行に行っていたから知らなかったが、母さんが相当泣いたらしい。
そりゃせっかく見つけた結婚相手が捕まったんだから泣くのもわかるが、母さんが泣いたということがあまりにも予想できなかった。だっていつも強気の母さんなんだぞ?そんな強気の母さんが泣いたんだ。子供の俺からしたら驚きもする。
まぁこう言っては悪いかもしれないが、そのお陰で母さんとも本音で話し合えて、お互いのことをもっと知れたのだけれども。
未だに俺が起きたことに気がついていない母さんと
そこに水を差す……というわけでもないが、邪魔をするのもあれなのでもう少し寝ようかな。
頭上には腕は伸ばせないので、両手を組んで手前に大きく蹴伸びをしながら横に寝転ぶ。
――視界が真っ暗になった。
記憶にあるのは聞いたこともない2人の悲鳴。そして車前方から襲いかかる大きな衝撃。一瞬体が浮いた気もするが、それ以降の記憶が俺の中にない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます