第10話

 兄が家にいる時間が少し増えた。兄は、私の話を聞いてくれるようになった。

 相変わらずお酒は飲むけれど、やけを起こしたみたいな飲み方ではなくなっていた。

 よかった。私は嬉しかった。

 安心したので、ちょっと遠い業務スーパーにやってきた。兄の好きな餃子でも作ってあげよう。そう思って、皮を手に取った。


「ママ!」


 子どもの甲高い声が、私の向こう側に投げられた。声と一緒に子どもはそっちへかけていく。


「ほら、走らへんの」


 「ママ」と呼ばれた女は、子どもを抱き込んだ。

 女を見て、私は思わず声をあげる。女は、顔を上げ、私を見た――。

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