第7話

 さとの体が女になっている。

 そのことに気づいたのは、眠っているさとに、布団をかけてやろうとした時だった。

 さとの平坦だった体は、あちこち丸く張り出していて、思えばにおいも甘酸っぱかった。

 おれはさとの首筋をじっと見た。なだらかで、腕につぶされた胸の谷間が、Tシャツの隙間からのぞいていた。前髪が流れて、目元を隠している。

 知らない人間のようだった。

 おれは、なんだか怖くなって、目をそらした。

 


 考えると嫌なことばかりだ。おれは、考えないように努力した。

 久しぶりに会うのに、三崎はずっと黙っている。おびえているのが見てとれた。今日だって、おれが待ち伏せていたから、逃げられなかったんだろう。

 三崎といる時は、できる限り普通にふるまおうとしているのに、なんでだろう。わからなかった。

 がちがちと手がふるえるのを感じた。唇がけいれんする。

 おかしかった。最近、ずっとおかしい。頭がぼんやりして、視界が曲がる。

 踏ん張らなければならない。

 落ち着かなければ。

 おれが手をのばしたら、三崎はびくりと身をすくめた。


「あっ……」


 三崎は、ごまかすような、ひきつった笑いを見せた。

 その瞬間、頭の中でなにか大きな音がして――おれの意識ははじけた。


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