第4話

 兄は背を向けて寝ていた。腹の部分に布団がだらしなくしなだれている。

 周りには、やっぱり空き缶が転がっていた。

 私はそっと鞄をおいて、座り込む。膝を抱えたまま、兄の体へとにじりよった。


「兄ちゃん」


 呼びかけても返事はない。

 私は空き缶の一つをとって、そっと口をつけた。

 何も出なかったけれど、においだけを吸った。

 こんなものをなんで飲むんだろう。兄も――父も。

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