第18話 実家の最後も無関心
言いにくい話も多かったわ。
特にロゼラインの実家のノルドベルク家の最後は壮絶!
罪を犯したエルフリードだけではなく父親の公爵も爵位を取り上げられたのよね。
慈悲で身の回りの物だけ持ち出しを許された元公爵は寝室に入ると、灯りとりのために火がともされていた燭台を振り回したの。
「この家はわしのものだ! 誰にも渡すか!」
そう喚いて、あちこちに火をつけ廻った。
一緒についてきていた警務隊は元公爵がすっかり無抵抗になっていたので油断していたのね。少人数の監視で充分だろうと、ベテラン一名と新人一名の二名しか彼には付き添ってなかったの。
火を消そうとすれば、館を走り回りながら火をつけ廻る元公爵を抑えきれず、抑えようとすれば火が燃え広がる。けっきょく屋敷内にいた使用人たちの避難などを優先させ、消防隊を要請し炎の中へと消えていった元公爵を残し館内から撤退。
こうしてノルドベルク公爵家はシュウィツア王国から姿を消したの。
関心の度合いかしら、ノルドベルク家の最後に対してはロゼラインは無感動、無関心だったわ。
弟のエルフリードを引き受けたのは、ロゼラインに協力的だったゲオルグ。
どうしてそんなことしたかって?
彼が言うには、元王太子パリスの機嫌を損ねたロゼラインの判断。
それがどれだけ自分たちにとってありがたかったか。
上の者が『公正』という感覚を身に着けていなければ、下々の者にどれだけ迷惑がかかるか、そんなことも分からずパリスとその取り巻きはロゼラインを責めたわ。
そしてその中に肉親であるエルフリードも交じっていたことが、ロゼラインにとってどんなにつらかったか。
今は下々と同じ立場となったエルフリードがそれを分かるようになるまで気が済まないと。
「私自身のこだわりというか、恩返しなんですけどね」
ゲオルグは言っていた。
実際、元公爵令息のエルフリードは、シュドリッヒ家の領地で家令見習いをしていた時も、周囲から妬みも受け、横領や泥棒などいろいろ濡れ衣を着せられたりして大変だったみたい。
でも、法の基準に従って調査をされ助かったときには思うことがあったみたい。
もし、ゲオルグが人の好き嫌いが激しく、古参の家臣の讒言を真に受けるような人だったら、エルフリードの境遇はどうなっていたかわからない。
ここに至ってようやく姉がやってきたことの正当さが分かったようだけど、時すでに遅しよ。
彼自身、取り戻すことのできなくなったものは山のようにあるわ。
でもまあ、その後は一市民としてまじめに穏やかな人生を送ったようだけどね。
それについての報告も一応ロゼラインにしたけど、これまた無関心だったわね。
「しかたなかろう、彼女は今、現世での記憶や執着を少しづつ失っていっている途中なのだ。生前冷たい関係だった肉親のことなどに興味がわくわけなかろう」
ティナがそう説明してくれた。
ああ、そういうこと。
なるほど納得、と、私も疲れたからロゼラインのそばで寝ることにしたわ。
ロゼラインが寝転がっているのは、ティナの絨毯のように長い御衣の上。
裾の部分はふかふかの毛皮があしらわれているから気持ちがいいのよ。
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