第0.3話 3人目の異国人
サブロウが王国をまとめ剣術を指南し、イチが食料の改善を行ったエルトニア王国。王国は外敵への守りを固め、人々は安定した食料供給により、平和に暮らしていた。平和であり食料があれば住む人も増え、王国の収入も大きくなっていった。
そんな王国の南部領に1人の異国人が現われた。
白いシャツに黒っぽい上下、手にはカバンを持ち、黒い長髪にピンクの眼鏡を掛けた女性であった。会社を出て打ち合わせに行く途中、歩道で気を失った。
「大丈夫かい?どうしたんだい?」
王国の西部領の商店街、店の前で倒れていた女性に、店の老婆が声を掛けた。黒髪の女性はヨロヨロと起き上がり、尻もちをついた。
「大丈夫のような・・・そうでないような・・・」
まだ意識がハッキリとしていないようであった。
「ここに座って・・・」
老婆は店から椅子を持ち出してきたて黒髪の女性を椅子に座わらせた。
「だれか、衛兵を呼んできてよ」
老婆は店に集まって来た野次馬に叫んだ。そこから1人、衛兵を呼びに走っていった。
衛兵が2人、走ってきて、女性を見て『ビクッ』とした。黒髪で黒目の女性。衛兵は思い出す。『我々とは体格も顔の作りも目も違う人が、
「少しお話しを聞きたいので、衛士詰め所までご同行いただけますか」
衛士は少しおどおどしながら女性に声を掛けた。
「あの・・・ここはどこですか?」
「ここはエルトニア王国のアリオンです」
「えるとにあおうこく?えっ!外国?」
「その辺りのお話しも伺いたいので、詰め所までお願いします」
衛士は女性を連れ、詰め所に向かっていった。女性は右を見、左を見しながら歩いていった。街並みは石造りの家が並び、道は石畳になっていてデコボコで女性には歩きにくかった。
女性は町役場のような建物の1室に通された。暫くして3人の男性が入室してきた。
「初めまして。私はジャン。こちらはリュカ。こちらは書記のカムランです。少しお話を伺いたいのですが、よろしいですか?」
ジャンは女性の向かいに座り、リュカはジャンの後に立ち、カムランは部屋の隅にある机に書類を置き、椅子に座った。
「はい」
女性は素直に答えた。
「では・・・お名前とお住まいは?」
「名前は・・・ヨウコ・マツシタです。住まいはニホンの〇〇県です」
「ん?ヨウコさんはニホンなんですか?そうすると以前の方と同じですね」
「以前?」
「ええ。このエルトニア王国には100年に1人ぐらいですがニホンから突然訪れる方がいらっしゃるんですよ。黒目で黒髪なのでもしや?と思いましたけどね。お仕事は何をされていたのですか?それと得意なことは?」
「仕事は電化製品の開発とかですね。得意なことは・・・特には・・・」
「電化製品?この国では聞かない言葉ですね。電化製品とは何ですか?」
ヨウコは部屋の中を見回した。机しかない殺風景な部屋で天井にも電球は無く、壁にロウソク台のような物が取り付けられているだけだった。
「えっと・・・電気は無いんですね・・・何と言えば良いか・・・生活を便利にするものと言えばいいんでしょうか」
「生活を便利にですか。では魔道具みたいな物でしょうかね。光の魔道具のライトや火の魔道具のコンロなどでしょうか」
「魔道具?物としては近いような・・・」
「分かりました。では、ヨウコさんのことを王城に報告させて頂きます。あぁ!大丈夫ですよ。異国人は保護するようになっておりますので、生活などの面倒はこちらでキチンと対応しますので。ヨウコさんは何も心配はいりません」
話の途中でヨウコの顔色が変わったのを見たジャンは『心配ない』と着けたし、ヨウコを安心させた。
その後、ヨウコは王城に行ったりもしたが、最初に現れた西部領アリオンに戻り、現代で使用していた生活道具のアイデアを出し、魔道具開発をしていくのであった。元々、西部領アリオンには迷宮と言われる魔石が取れる場所があり、魔石が豊富なので魔道具の制作に力を入れていたという下地があった。
ヨウコのアイデアで作られた便利な魔道具が王国中に浸透して使われだすのに時間は掛からなかった。
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