街
第6話 爵位と散歩
王家が後ろ盾になるにあたり、どうすれば不審に思われず、異国人を守れるか宰相は考えたそうです。それが『他国貴族の亡命』だそうです。異国も他国も同じと言えばそうなのですが、亡命は問題が有りそうな気がしますが、宰相が決めたことに私は従います。たぶん王国の高位貴族には異国人として根回ししてあるのだろうと思います。高位貴族と言いましても、王族以外には5公爵と数名の侯爵、男爵しかおりません。宰相と4領主が公爵になります。
王城の一室で爵位授与式が行われました。王、宰相、有力貴族が列席し、タバタ様へ男爵位の授与です。タバタ様は領地を持たない1代限りの男爵です。今後、男爵として貴族として生活するようになりますが、貴族の仕来たりは分からないと思いますので、私や上位の貴族から学んでいくようになると思います。私は男爵家の3男ですが、貴族の仕来たりは少しは分かるつもりです。
授与の後、宰相からの通達があります。タバタ男爵と私が出席しました。
通達を要約すると、今タバタ様が住んでいる2号館を王家より下賜され、執事、メイドもそのままで、私が秘書としてタバタ様の補佐をする。王家が後ろ盾となるので、必要なものは上申する。仕事は好きなことしてもらって構わないが、私と相談して大きな改変を行う場合は、宰相に相談する。という事が書かれていました。
タバタ男爵の屋敷で、簡単な祝宴が開かれました。まだ知人の少ないタバタ様ですから、参加者は私と取調官のフローラン様です。今後、タバタ様に知人が増えればパーティーなども催されるようになる筈です。その時は私は補佐として裏方になると思います。
タバタ様のお屋敷は王家が管理していただけあって、私の実家の男爵家よりも良いもののようで、部屋数は10と男爵家としては一般的ですが、装飾が豪華で、部屋に敷いてある絨毯も毛足が長く、良いものです。私もこちらに住まわせて貰おうかなと思っています。今度、タバタ様に聞いてみようと思います。
それと、この屋敷の庭の一角に
授与式を終えて数日経ったころ、タバタ様は街を見たいと仰いました。確かに、何かするにしても現状が分からなければやり様がありません。私はタバタ様と街の視察に出掛けることにしました。視察と言っても街がどうなっているか分からないと思いますので、今日は、東区の市場になるかと思います。
王都と一口に言っても大きな街ですので、全部見るだけでも10日は掛かると思います。王都は2門の前に広場があり、そこで3本の街道が交差しています。南側に行く街道を境に東区、西区と分かれています。東区は商店が多く、西区は鍛冶や錬金などの工房が多くあります。
東区の市場には沢山の商店がありますのでタバタ様の興味がありそうなお店を中心に案内したいと思います。タバタ様は料理といいますか、素材や香辛料の方に興味がおありの様で、屋敷での食事でも料理人によく素材や香辛料のことを聞いておられます。ですので市場を見学し、昼食は屋台か食堂でと思っております。屋敷の料理と食堂の料理で、味の違いなどにも興味があるのでは無いかと私は推察しております。
屋敷から市場までは徒歩で行けますし、お店も回る予定ですので馬車では行きません。普通の貴族は近くてもお店の前まで馬車で移動するのですが、それだと見学になりません。欲しい商品を買うだけになってしまいます。タバタ様には王都のすべてを見ていただき、今後の考察に活かしていただきたいと思っております。
屋敷を出てすぐにタバタ様から質問がありました。『石畳は誰が作っているのか』『門の衛兵は夜もいるのか』『貴族の家には馬と馬車は必ずあるのか』とかですね。答えは『石畳は専門の石工がいます』『夜も交代でいます』『男爵位ですと貸馬車が多いですが、上の貴族位になれば専門の厩舎番がいます』になります。
タバタ様には石が珍しいのでしょうか。石塀を見たり、家の石積みを見たり、石畳を観察されたりしています。大小様々な石がキレイに積んであるので、私も子供の頃、屋敷の修繕に来た職人に質問したことがあります。キレイに積んだだけでは崩れるけど、何故崩れないのかと。答えは小さい石を砕いて水と練って石の間に入れているとのことでした。これをすると石同士がくっ付いて崩れないそうです。
さて、この感じで進んでいると市場に着くまでに相当の時間が掛かりそうです。初めての街なので見惚れるのも仕方ないですね。私は補佐ですからタバタ様の見たいものにお付き合いいたします。
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