幕間
第0.1話 最初の異国人
最初の異国人が訪れたのは300年程前。現在のように王国として統一されていない、各地に点在する小さな領地の1つだった頃。
当時の領主は領地を大きくしようと隣地の領に戦を仕掛け、配下に組み込んでいた。しかし、人質をとる訳でもなく、誓約書程度で配下としていた為、たびたび裏切りに有っていた。
領主は配下領の裏切りにあい
領主は、そろりそろりと男に近づいていった。
男は焚火を見つめ、見た事のない服を纏い、髪を結い、脇には剣と思われる細い物が置いてあった。領主は思い切って声を掛けた。
「ここで1人で何をしておる?」
「見ての通り、焚火にあたっておる。そう、息巻くな。まぁ座れ」
領主は警戒しながら焚火の反対側に座った。
「何故、このような所に1人で居る?」
「ワシにも分からん。目が覚めたらここに居った。ここは異国か?いや、ワシの方が異人か」
「何?」
謎の男は焚火を見つめながらポツポツと話し出した。
「ワシは配下の裏切りに合った。夜半に奇襲があり、数人の近侍と共に戦ったが、負けが分かった時点でワシは屋敷に火を放った。そして自害した筈だった。だが、ワシはここで目が覚めた・・・神はワシにまだ何かさせたいようだ」
領主は謎の男の不思議な話に聞き入っていた。
その時、背後の草むらからから4人の革鎧を纏った者が出てきた。領主は咄嗟に剣を構えた。
「その命、頂戴する」
革鎧が叫びながら走り込んでくる。謎の男は、剣を掴むと一閃。走ってきた男の脇腹を切り裂いた。
「何?」
革鎧達が怯む中、謎の男は腕をダラリと下げ、残りの3人を
革鎧達が一斉に飛び掛かるが、謎の男は1人を躱し、2人目の腕を斬り、3人目の首を刎ねた。そして返す剣で2人目の革鎧を背中から切った。1人目は領主に飛び掛かるが、剣を弾かれ、空いた脇腹に剣を差し入れられた。
そして謎の男は何事もなかったかのように焚火の前に座った。
「追手を掛けられたか・・・」
領主は呟きながら謎の男と同じように焚火の前に座った。何を話す訳でもなく、2人して焚火を見つめていた。
「領主様!ご無事で!」
暫くすると領主の護衛が駆け込んできた。
「お前らは大丈夫だったか」
「はい。森で道に迷いましたが何とか・・・」
護衛は傍らに座る謎の男に気づくと剣の柄に手を掛けた。
「構うな!」
領主が護衛を制した。
「俺はエルトニアの領主のアバエルという。お主の名は?」
「ワシは
「俺は領地に帰るが、お主も来ぬか。お主の腕を見込んで兵の訓練を頼みたい」
「ワシは特に行く当てもない。メシと住む場所があるなら行こう」
サブロウは領主と共にエルトニア領に向かった。
サブロウは、国のまとめ方、人質の育て方を領主に戦の仕方を騎士団に指南するのであった。エルトニア領主は10年の時間を掛けて小さな領地をまとめ、エルトニア王国と宣言し王位に就くのであった。
サブロウはエルトニアの地で30年生活した。主に騎士への剣術指南であった。サブロウは老齢になった時、騎士の1人を後継者に指名し、自身がずっと使ってきた愛刀を下賜し、その生涯を閉じた。サブロウ亡き後、後継者はサブロウ流を名乗り、騎士を対象に剣術を教え始めた。サブロウの残した剣は、体の小さい者や女性に扱いやすい軽い剣であり素早い動きを可能にし、体格で騎士を諦めていた者たちの光明になった。
エルトニア王国の初代王は『王国に来た異国人は国を豊かにする。王国に利があるならば積極的に保護せよ』と遺言を残し、この世を去った。王国も代替わりしているが、この遺言は代々継承され続けた。
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